以前、1980年代の「ウォークマン」の開発者のインタビューで、「こんな華奢な構造で、粗雑に扱ったら壊れないか?」と外国人に聞かれ、「そうならないように扱うんです」という旨の回答をしていた。これは、すごい答えだ。
日本の障子がそこで思い出される。障子は指で穴を開ければ覗けるし、声も丸聞こえだ。でも丸見えではないし、光が入って部屋が明るくなり、通気性もいい。だから「穴を開けずに、聞き耳を立てずに」使ってくださいというものだ。石造りの西洋建築にはない発想で、日本人は魅力のある製品ならデメリットも享受できる。我慢ができる、しかし面白い商品を求めるユーザーが日の丸家電を育てた。
また、競争で負けそうになっている側の末期に出てくる製品は絶対にいいものだと僕は考えてる。パイオニアが液晶テレビに負け、プラズマテレビから撤退する直前に「KURO」というハイエンド製品を購入したが、液晶テレビが主流の現在、新製品が出てもいまだにKUROの発色がきれいだと僕には思える。
最近は残念なニュースが相次ぐ日本メーカーだが、本当に劣勢になったときにこそ魅力あふれる凄い製品が出てくるのではないかと期待もしている。
●PROFILE
ながしま・ゆう/1972年生まれ。2001年『サイドカーに犬』で文學界新人賞を受賞しデビュー。2002年『猛スピードで母は』で芥川賞、2007年『夕子ちゃんの近道』で大江賞を受賞。ほか『愛のようだ』(リトル・モア)など著作多数。
※SAPIO2016年6月号