マスコミのこの混乱は、既に1989~1991年のソ連・東欧社会主義の崩壊時に見られた。賃金値上げと福祉の実現を訴えてデモ行進する社会主義者が保守派、そういう社会主義者の運動を警察力で弾圧する勢力が革新派。
この混乱を回避するには、政治思想を抜きにして体制派・反体制派と言えばいいような気がするが、これでも駄目である。スペイン内乱時、右派のフランコたちは反体制派だった。日本の二・二六事件の反乱軍は右派ではあるが体制派とも反体制派とも言えない。天皇親政を主張したからである。
右派・左派という区分は、フランス革命に始まった。自由・平等の革命の理念をさらに進めるのが左派、それに賛成しないのが右派。保守・革新もほぼこれに対応している。
自由と平等を徹底的に進めたのが支那文化大革命であった。それが左派であり保守であるとして混乱が起きているとするなら、自由と平等という根本原理の意味を問いなおさなければならない。
●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。著書に『バカにつける薬』『つぎはぎ仏教入門』など多数。
※週刊ポスト2016年6月17日号