安倍晋三・首相が消費税10%への引き上げを2019年10月に延期すると発表したが、消費税を巡る論議では、選択肢は「予定通り10%に上げる」か「増税を延期して8%に据え置く」かの2つしかなかった。重要な選択肢が一つ抜けている。それは税率5%に戻すというものだ。
ノーベル賞経済学者も「消費税は5%に戻したほうがいい」と勧めている。安倍首相は今年3月、伊勢志摩サミットに備えて国際金融経済分析会合を開き、世界のノーベル賞経済学者に話を聞いた。その1人、ポール・クルーグマン米プリンストン大名誉教授は、安倍首相の経済ブレーンの浜田宏一・内閣官房参与(イェール大学名誉教授)との共著でこう指摘している。
〈日本に必要なのは、消費増税ではありません。国民の多くが、「これからは給料も上がるし、物価も上がる。だからいまのうちにもっとおカネを使おう」と思えること。(中略)では、そのために最も効果的で、なおかつ手早い政策は何か。それは、増税した消費税を一時的に減税することです。安倍首相が増税したことは気の迷いだったと一笑に付せばいい。そうして、元の税率に戻すのです〉(『2020年 世界経済の勝者と敗者』)
たしかに、安倍首相が“増税は日本経済のためにならない”と判断するのであれば、8%に据え置くのは理屈に合わない。
むしろ、クルーグマン教授の助言通りに、「5%に戻す」と表明すれば、株価も支持率ももっとハネ上がるだろう。なぜ、それをしないのか。
首相の増税再延期に影響を与えたと見られる経済ブレーンたちを直撃した。クルーグマン氏と共著を著わした浜田氏は、「いま海外におりますので、7月に帰国するまで取材はお断わりしている」との回答だったが、浜田氏とともにアベノミクスの理論的支柱となった経済学者の本田悦朗・内閣官房参与(財務省出身、明治学院大学客員教授)が取材に応じた。