ライフ

食道機能障害の最先端 内視鏡手術で注目される「POEM」

 食道は蠕動(ぜんどう)運動しながら、口から入った飲食物を運ぶ。胃に近い部分にくると下部食道括約筋(かつやくきん)が開いて飲食物を胃に送る。こうした食道の機能に障害が起こり、下部食道括約筋が十分開かなくなるのが、食道アカラシアだ。

 下部食道括約筋は、胃酸や内容物などが胃から逆流しないように、一定の圧力で保たれている。食道アカラシアは食道の粘膜や筋肉に異常はなく、下部食道括約筋への脳からの信号に何らかの障害が起きているのが原因と考えられている。比較的若いころに発症し、食べ物が食道につかえて飲み込めず、おう吐や胸痛(きょうつう)などが起こる。まれに食道がんを起こすこともあり、注意が必要だ。

 昭和大学江東豊洲病院消化器センター長の井上晴洋教授に話を聞いた。

「おう吐や胸痛、背中の痛みを訴えて受診しても、レントゲンや内視鏡では発見されにくいため、気のせいや逆流性食道炎と診断されるケースも少なくありません。長年治療せず、放置したために重症化し、食道が拡張・変形してしまい、全摘して食道を再形成しなければならないケースもあります」

 食道アカラシアの診断は、食道造影検査(バリウムによる透視)、食道・胃内視鏡検査、食道内圧測定などを行なう。

 治療は薬物療法やバルーン拡張術、腹腔鏡(ふくくうきょう)による筋層(きんそう)を切断する手術が実施されていた。しかし、バルーンで一時的に拡張しても再狭窄(きょうさく)することがあり、中には食道が破れて緊急手術になる危険性もある。また腹腔鏡下では小さいとはいえ、5か所に傷がのこる。そこで井上教授が世界で初めて開発したのが、胃カメラによる経口内視鏡的筋層切開術(けいこうないしきょうてききんそうせっかいじゅつ=POEM)だ。

 体の表面を傷つけることなく、患者の病状に合わせて筋肉の切開の長さを変えることが可能などのメリットがある。

関連キーワード

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン