「パットはオーバーするくらい強く打て」が信条


「スーツを新調して、今年はきっとネクタイを締める日が100日を超えるだろうね。毎日毎日、朝から晩まで会議、会議、会議で、今まで1日2回だった食事が3回になった。最近はゴルフクラブじゃなくて、言葉が商売道具みたいだ(笑い)。

 このまま引退するのかって? バカいっちゃいけませんよ。長年の経験の中で考案した10種類以上のオリジナルのトレーニングメニューを毎朝1時間やっています。今朝も、ホテルでゴムチューブを使ってみっちり体を動かした。日々筋力が落ちないように工夫しているし、気持ちの中でずっとクラブを握っているんです。でも、ドライバーの飛距離は落ちているけどね」

 目標は10度目のエイジシュート。年齢と同じ、もしくはそれ以下のスコアで回る夢のようなレベルだが、「試合での勝負の掛かった場面で出したいよね」と呟く横顔は勝負師のそれだった。

「今年は何試合出られるかわからないけど、準備だけはしておきたい。力は落ちた。それは認めます。まだ3回しかコースに出てないんだからね。でも、JGTO会長として、プロゴルファー・青木功の出場を認める判を1つでも多くの大会で押したい。その判断は厳しくしますよ(笑い)」

 国内男子ツアー人気復活のキーマンは、今も密かに優勝カップを手渡されることを狙っている──。

◆あおき・いさお/1942年生まれ。千葉県出身。1965年にツアーデビュー、1971年「関東プロ選手権」で初優勝を飾る。1976年に初の賞金王に輝き、1978年からは4年連続賞金王。1980年の「全米オープン」ではジャック・ニクラウスと4日間トップを争い、最終日最終組ながら惜しくも2位。プロ通算85勝。2004年に世界ゴルフ殿堂入り、2009年紫綬褒章、2015年旭日小綬章を受章。

撮影■藤岡雅樹 取材・文■工藤晋

※週刊ポスト2016年6月24日号

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