熊の出る山に入る時は鈴を鳴らすなど音を出して追い払うのが身を守る術とされた。しかし、その安全常識ではもはや命を守れないかもしれない。熊による被害が近年、急増していることも気がかりだ。

 1980年代に12.6人だった日本全国の熊による年間被害者数は1990年代に23.4人と倍近くになり、さらに2000年代に68.3人、2010年代には97.4人まで激増した。

 熊の目撃件数も増加の一途をたどり、秋田県は128件で前年同時期より47件増えた(5月末時点)。宮城県では196件、山形県でも88件と約4割増である。

 秋田県庁自然保護課では、「昨秋、ドングリなど熊の餌が豊作だったので出産が多く、個体数が増えた」とみているが、前出の大井代表はこう警鐘を鳴らす。

「熊が人の住む里に下りてくる理由として、“自然破壊で山に餌が少なくなったから”とよくいわれますが、むしろ逆です。戦後しばらくまで人は里山で薪や炭を取ったり、畑を作ったりして、“ハゲ山”に近い状態のところも多く、動物にとってはすみ心地が悪かった。ところが近年は地方の過疎化などで里山は利用されなくなり、森林が回復、熊にとってもすみやすい環境になっています。そのため都市部の近郊まで活動範囲が拡大し、被害数や目撃数が増えていると考えられます。決して秋田の森の中だけの問題ではありません。

 熊は基本的に植物を食べますが、簡単に得られる栄養価の高いものがあればそれを食べるようにスイッチできる、順応能力の高い動物です。それが人間だったら、人間を食べるようになる。秋田の惨劇はどこででも起こりうるのです」

※女性セブン2016年6月30日号

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