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自民党の支援団体 票の代わりに要求呑ませる圧力団体そのもの

 7月の参議院選挙を前に各党は支援団体固めに必死だ。自民党の伝統的な支持組織は業界団体、医療・福祉系団体、自衛隊や農協などの職域団体などに分かれるが、それとは別に安倍政権下で急速に影響力を増しているのが、保守系民間組織・日本会議だ。全国で「憲法改正1000万人署名」などを推進し、男女別姓反対や女性宮家反対を唱えて政界にも熱心にロビー活動を展開してきた。

 現在、国会には日本会議国会議員懇話会のメンバーが2百数十人、安倍政権の閣僚の半数が名を連ねている。「選挙では数十万票を動かす」ともみられている日本会議は参院選でどの候補を支援するのか。

「比例代表では阿達雅志候補と山谷えり子候補の2人を組織として推薦している」(日本会議事務局)

 阿達氏は当選1回の若手で安倍首相とは親戚関係にある(阿達氏夫人の祖父は佐藤栄作・元首相で、安倍首相の祖父、岸信介・元首相の弟)。前回参院選では落選(佐藤ゆかり氏の衆院鞍替えで繰り上げ当選)したが、日本会議が支援についたことで当選の可能性がかなり高まったとみられている。

 山谷氏は安倍内閣で拉致担当相を務めた首相側近として知られ、日本会議の他に、宗教団体「佛所護念会教団」(信者数・116万人)の支援も受ける。支援組織が多いほど、選挙には有利だ。『「族議員」の研究』(日本経済新聞社刊)の著書がある岩井奉信・日本大学法学部教授が指摘する。

「自民党は小泉政権時代に公共事業や医療費を削り、郵政民営化を進めたことで建設業界、医師会、郵便局長会といった伝統的支持基盤が離反し、政権交代で一時は民主党に寝返った。

 その関係が安倍政権になって確実に復活している。団体側にすれば、議員が若返って自民党に族議員の有力者がいなくなった。一方の選挙基盤が弱い若手議員たちは組織が欲しい。そこで両者の思惑が一致し、急速に結びついている段階とみていい。

 自民党の支援団体は、票を出す代わりに自分たちの政策要求を呑ませるわけだから圧力団体そのもの。自分たちの意のままに動く族議員を養成し、集票パワーを武器に政策をねじ込んでくる。それは国民ではなく、業界団体が政策を決めるかつての自民党への逆戻りです」

 前回の参院選では、小泉自民では抵抗勢力とされたはずの全国郵便局長会の組織候補が比例1位の得票をたたき出した。今回の参院選では、票に飢えた若い候補者たちがさらなるオールド自民党への回帰路線を進むことになるだろう。

※週刊ポスト2016年6月24日号

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