業績連動を重視する欧米企業では、トップの高すぎる報酬が問題視され、見直す風潮になっているが、それでも日本企業の役員報酬とは10倍前後の開きがある。人事ジャーナリストの溝上憲文氏はこんな見解を示す。
「日本企業はプロパー社員からトップに上り詰めた人も多いため、同僚たちとの年収比較やこれまでの役員報酬の枠組みを大きく超えてお金をもらうことに抵抗がある。
1億円を超えそうな役員が、『名前を公表されて親戚や友人から羨ましがられるのがイヤ』『自宅に泥棒に狙われるのでは?』といった理由から、9990万円にしてほしいと懇願したという話まで聞きました。
そもそも、多くの企業は社員の賃金制度、評価システムさえ開示していませんし、役員報酬の算定基準はなおさら。人事部マターではなく役員室や秘書室の管轄になっているケースがあるため、完全に“伏魔殿”となっているのです」
役員報酬は何を指標に決めているのか。その根拠となる計算式を明らかにしない限り、いくら1億円以上の役員の氏名を公表したところでその妥当性を判断できず、開示制度自体が形骸化するだけだ。
では、上場企業のサラリーマン社長の年収はいくらまでなら理解されるのか。
「トマ・ピケティ氏の論を参考にすれば、社員の平均年収の100倍を超えたら所得格差が深刻かもしれません。ソニーは社員の平均年収が850万円ほどなので、平井社長の報酬は、まだ妥当な範囲内ということになりますが……」(溝上氏)
今後、役員報酬の見直しや底上げが企業経営にどんな影響を及ぼすのか。じっくりと検証していく必要があるだろう。