ゴルフ、ジョギング、登山──健康のためによかれと思って運動をすればするほど、知らず知らずのうちに負荷がかかっているのが「ひざ」だ。
ある日、突然“爆弾”が破裂し、激痛に襲われると、生活のすべてに支障をきたし老後の人生は一気に暗転する。ひざ痛対策は、全ての中高年の必須項目だ。
定年退職から半年、布団から起き上がろうとしたとき、Aさん(65)のひざは悲鳴をあげた。以前から起きがけにきしむような痛みを多少感じることがあり、そのたびに湿布を貼って対処してきたが、ここまでの激痛を感じるのは初めてだったという。
「今では椅子から立ち上がるだけでひざがこわばって痛くて、歩くのさえ億劫なので家に引きこもりがちです。妻と散歩に出掛けても歩くペースについていくことさえ難しくなってきた。唯一の趣味がゴルフなので、定年後は日本全国のコースを回りたかったんですが……。こんなことなら、もっと早く病院で治療しておけばよかった」
ひざに“爆弾”を抱える中高年は多い。厚労省の調査(2008年「介護予防の推進に向けた運動器疾患対策について」報告書)によれば、加齢による「変形性膝関節症」、いわゆるひざ痛の患者は予備群含めて約3000万人と推計されている。
ひざ痛が恐ろしいのは「これぐらいの痛みなら心配ないだろう」と放置して悪化させるケースが多いことだ。
厚労省の国民生活基礎調査(2010年)では、「介護が必要になる理由」として、脳卒中(全体の21.5%)、認知症(15.3%)、高齢による衰弱(13.7%)に続き関節疾患が4位(10.9%)となっている。軽いひざの痛みを放置した結果、数年後に寝たきりになるという例は少なくないのだ。