池袋の中華料理店『聚福楼』では、羊を背骨ごと丸焼きにしてダイナミックに食らいつく。背骨近くの肉は脂が乗っていて、噛めばジュワッと甘みが溢れ出る。そのままでもイケるが、クミンや唐辛子をブレンドした特製スパイスをたっぷりつけると格段に風味が増す。
「羊は精力がつくので中国では一年中食べています。肉の味付けも特製スパイスも、現地の味です」(オーナーの山本晶氏)
羊肉は月齢で「ラム」と「マトン」に大別される。ラムは1歳未満の子羊で、それより上がマトン。一般的には子羊ほど肉がやわらかくてクセが少ないとされるが、さらに厳選したラムを出すのが東麻布『ワカヌイ ラムチョップ・バー・十番』。
看板メニューのラムチョップは塩胡椒のみで肉の持ち味をストレートに引き出し、さらりと口溶けがよく上品。羊肉の概念を覆される。
「ラムチョップは、最も栄養価が高い1~3月の牧草で育った生後6か月のニュージーランド産子羊の熟成肉を使用しています。若葉だけを食べたラムは臭みがほとんどない。あばらの骨付き肉なのでほどよく脂が乗っていますが、ラムの脂は体に吸収されにくいと女性にも好評です」(熊倉正幸・店長)
東京は羊料理ワンダーランド。食わず嫌いはもったいない。
■取材・文/渡部美也 ■撮影/小松潤
※週刊ポスト2016年7月8日号