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「18才選挙権」で主権者教育が学校現場で拡大中

神奈川県立湘南台高校では6年前から主権者教育を実施

 今回の参議院選挙で注目を集めている「18才選挙権」。選挙権の年齢が引き下げられるのは、1945年に「20才以上」となって以来およそ70年ぶりのことだ。

 一部の高校生に選挙権が与えられるようになったことを受けて、学校の現場でも政治を教え、学ぼうとする動きが進んでいる。文部科学省が今年4~5月に全国の高校を対象に行った調査では、94.4%の高校で今春卒業した生徒に選挙の仕組みなどを指導する主権者教育を実施していたことがわかった。

「主権者教育」とは耳慣れない言葉だが、「主権者=国家の政治を最終的に決める主権を有する者」つまり私たち一人ひとりが主権者として、どう国や地域とかかわるかを考える教育のこと。

 神奈川県立湘南台高校では、6年前から主権者教育を実施している。授業で模擬投票、そして開票結果を受けての事後授業を行うなど、一人ひとりの投票行動がどのような結論を生むかなどを生徒に実感させている。

 黒崎洋介教諭は「一人ひとりが主権者として政治に参加する意義を考える機会になってほしい。自分の意見を持つことの大切さと同時に、多様な意見があることを知ることに意味があると思う」と話す。

 同校では3年生だけでなく、1、2年生にも教育の機会がある。たとえば模擬議会の授業では、委員長報告、討論、採決と、国会の本会議の流れを踏襲する。生徒は、集団的自衛権や震災がれきの受け入れの是非など、現実に起きているテーマごとに、与党と野党のどちらに所属するかを替え、訴える内容は同じ党内でディスカッションして決めていく。そして採決の段階では、所属政党にかかわらず、自分の意思で一票を投じる。

 7月には、全生徒を対象に模擬投票を実施する。それを前に6月22日には、高校2年生のクラスで事前学習の授業が行われた。

 黒崎教諭が「若者の投票率は何%くらいだと思う?」と問いかけると、生徒からは「30%」という答えが。確かに一昨年の衆議院選挙での20代の投票率は32.58%だった。

「つまり、このクラス40人のうち12人くらいしか投票に行かないということ。その結果、若者の声が政治に反映されなくなってしまう。では、若者として政治に、社会にどんなことを言いたい?」(黒崎教諭)

 生徒たちはグループディスカッションをして、何が自分たちの望みなのかを確かめ合う。議論が終わると、1人の女子生徒が手を挙げた。

「大学に進学する人に、学費の補助とかをもっと積極的にやってほしい」

 それを受けて黒崎教諭は、「今回の選挙では多くの政治家が、奨学金制度の充実をあげています」と解説。「18才選挙権が実現したことで、その結果を受けて、若者向けの政策が実現するかもしれません」と可能性を提示した。

 黒崎教諭の授業は、考え、話し合い、意見を述べさせることを重視している。こういったことを、私たちは選挙のたびにしてきただろうか。自分は今、政治や社会に何を言いたいか、誰がそれを実行してくれているかを考える機会は、少なかったのではないか。

※女性セブン2016年7月14日号

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