◆孫正義氏がマンUのオーナーになる日
サッカーのイングランド・プレミアリーグの名門「マンチェスター・ユナイテッド」を買収するケースを考えると、「強い円」の威力はわかりやすい。
マンUは2012年にニューヨーク証券取引所に上場しており、この6月末時点での時価総額は約26億ドル。この額でマンU株をまるまる買い占めようとしたら、半年前なら約3200億円かかったところが、今は約2600億円で済む。
「ドルの買い物は2割引き」になり、約600億円も“値下がり”したのである。このバーゲンに乗らない手はない。
「2003年にロシア人石油王のアブラモビッチ氏が名門クラブ・チェルシーを買収し、世界にその名を轟かせましたが、マンUならそれ以上のインパクトがあり、オーナーは海外市場で一気に信用力を高められる。孫正義氏あたりなら、ソフトバンクを世界的なブランドにするために仕掛けても、おかしくないでしょう」(専門情報サイト『フットボールチャンネル』編集長・植田路生氏)
折しもソフトバンクは中国電子商取引大手・アリババやゲーム子会社の保有株を売却し、2兆円近いキャッシュを調達したばかり。新たな大型投資案件を探す局面だ。
「マンUの放映権料は欧州でも最高水準で、ビジネスとしてのうまみは大きい。また、毎夏のシーズンオフにはスポンサー企業のある国に出向いて親善試合をするので、日本人、日本企業がオーナーになれば、当然、毎年日本に来るでしょう」(植田氏)
恩恵はサッカーファンにも及ぶ。こうして「強い円」を最大限に活かせば、日本経済には全く違った地平が見えてくる。
※週刊ポスト2016年7月15日号