夏の強い日差しを遮り、風を通すことができる節電アイテムとして、ここ数年再注目されている“すだれ”。
その歴史は古く、『万葉集』では額田王が歌に詠み、清少納言の『枕草子』にも登場するなど、広く生活に溶け込んでいた。
「昔は貴族や大名の家、神社仏閣などで使われる高級品でしたが、江戸時代になって庶民の間にも広がったんです」
そう語るのは、東京都台東区にある「田中製簾所」の5代目・田中耕太朗さん。現在は、一般的な外掛けや内掛けに加え、障子や衝立、屏風などの応用すだれなど、さまざまなスタイルのすだれを製造している。
『田中製簾所 江戸すだれ 花寄屏風』(2曲<2つ折り> 1曲あたり:縦幅45cm×高さ120cm×奥行2cm 9万7200円)の特徴は、竹や萩、ごぎょう、蒲、葦などの天然素材を使っていることだ。これらの材料は、乾燥や湿気によって長さが変わることなく安定しており、風雨にさらされることも多い“すだれ”に適しているという。
そして、天然素材ならではの微妙な変化に対応できて、長年使っていても編み目が緩まず、壊れないように仕上げるために、職人が手作業で編んでいる。
材料の選別も重要だ。竹の場合は丸竹を一定の長さに切り、もみぬかや砂、塩などでこすってから水洗いし、汚れを取ったあと、ふしを鉋で削るなどの加工を経て1週間ほど乾燥させ、削った順に束ね、編んで仕上げる。だが、その他の材料は、皮のむけや傷、虫食い、ねじれなどが原因で、仕入れたものの3~4割しか使えないこともあるという。
「すだれを何枚も並べて使う場合は、色合いを揃えることも大切です。ただ編むだけなら、1日に90cm×180cmのすだれを数枚仕上げられますが、その前の選別に数週間かかってしまうこともあるんです。実用性と美しさを兼ね備えたものを作るのが、私たち職人ですから」(田中さん)
※女性セブン2016年7月21日号