国内

増加する高齢者犯罪は介護疲れが動機の場合も多い

 警察庁の発表によると、高齢者の犯罪者数は近年増加の一途を辿り、高齢者人口の増加の勢いを上回っているとされている。また高齢者による殺人事件で介護疲れを動機に上げる人も多い。介護問題に詳しい健康社会学者の河合薫さんが、介護疲れの原因について説明する。

「ストレスにはシトシト降り続ける雨のような慢性的ストレスと、ゲリラ豪雨のような突発的ストレスの2種類があり、どちらも傘をさして心を守る必要があります。ところが人間は適応能力があるので、シトシト雨にダメージを受けながらも慣れる。日常的な介護はシトシト雨です。心が疲弊しても気がつかない。

 そこに何らかの問題が起こりゲリラ豪雨がくると一気に心の許容限度を超えて、“もういっか”という気持ちになる。踏ん張っていた気持ちが切れて、殺人にいたるケースもあるのです」

 またワークライフバランスの崩壊が、介護者の逃げ場を絶つこともある。

「生活を充実させて仕事をがんばることも大事ですが、生活が介護でつらくなってしまっても、仕事があればそこでやりがいや生きがいを見つけられるし、職場が介護の息抜きにもなります。介護と仕事を両立できるように、会社もすべきです。家にしか居場所がない状況は避けるべきです」(河合さん)

 介護に疲れた娘と高齢の父が、痴呆症とパーキンソン病を患う母を連れて入水自殺を図った、「利根川心中事件」もそうした悲劇の一つだった。

 事件が起きた埼玉県深谷市では、自治会、民生委員など地域住民たちが連携して『地域支え合いマップ』を作成し、見守りをしていた。マップは“65才以上の単身者”“75才以上の高齢者のみの世帯”など色分けされて優先順位がつけられていたが、今回のように、子供と同居している3人家族の場合、“見守り”からこぼれてしまうことがわかった。深谷市役所の担当者が言う。

「特にまじめで責任感が強いようなかたは、困ったときにSOSを出すのが難しい。“まだ大丈夫”、“まだお世話になりたくない”というかたが結構いらっしゃいます」(福祉政策部)

 また生活保護についても問題は山積みだ。不正受給が指摘される一方で、本当に困っている人が手を伸ばせない状況がある。

関連記事

トピックス

大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン