ゴタゴタした夫婦関係を見直し、家族4人でやり直すためにもっと身の丈にあったマンションに買い替えると決めて、もとのマンションを売った差額200万円は、子供の学費として残しておくはずだった。その後、鈴木さんが生活費をおろすと、残高は278円になってしまった。

「確かに自分が好きになった人だけど、ここまで被害を被ることはない」

 そう気づいた時、離婚を決断した。しかし、驚きはそれだけでは終わらなかった。

「あの人、家を出て行く時、卓上ガスコンロとガスのボンベまで持っていったんです。柄のそろった食器が家族4人分あったんだけど、それも自分の分は持っていったの。映画で賞をもらった時のトロフィーや楯は納戸に置いていったにもかかわらず、ですよ」

 あまりのセコさに涙も出ない。

「一緒にいた当時は、家族だし、子供の父親だし、脂汗を流して、必死になって“金は必ず返す。いくらでもいい、出してくれ”って頭を下げるんだもの、家族1人がこんなに困っていたら、誰だって助けますよ。そこで助けなかったら、私自身が苦しかったろうと思います。でも、こんなこと、恥ずかしくて誰にも言えなかった。あの2年間は、たった1人で心底、苦しみました」

◆子供には離婚の原因をありのまま伝えた

 鈴木さんは、2人の子供たちに離婚に至った経緯を率直に打ち明けた。

「私、子供にこの通帳を見せたの。別れた相手のことを悪く言ってはいけないって言うでしょう。でも、それでは子供は納得しない。きれいごとじゃないんですもの」

 通帳を見た子供は「えーっ、お金全然ない! どうしたの?」と目を丸くしたという。

「これは前のマンションを売って残ったお金で、生活費とおまえたちが高校に行く時のお金だったんだけど、お父さんがみんな使っちゃったよ。こんなことをする人は家族と思えないないから、ママは離婚するからね」

 と。娘も息子もきっと傷ついたに違いない、という。一方で、納得してくれているはずだと確信もしている。そしてそんな元夫に、長男はついていった。「いつでも戻ってきていいんだよ」と言っているが、父親との暮らしが楽しいらしい。鈴木さんはそれはそれでよしとしている。

 そこからの再出発──夫につけてもらったペンネーム“夏石鈴子”の名を捨てると決めた。そして鈴木さんは自分のために、縁起のいい“鯉の滝登り”の柄の着物を買った。くだんの“男に捨てられない方法”を教えてくれた作家が、こう言ったのだ。

「運が悪い時ほど、いい肉を食って、いい格好をしてなさい。たとえどん底だったとしても、自分が今、運が悪いというのを他人に教えても、何にもいいことはないんだから」

 今度はすぐさま納得した。

※女性セブン2016年8月11日号

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