そんな中堅議員からは、「谷垣さんは声が出せないんじゃないか」「頸髄損傷なら、少なくとも当分は車椅子生活は避けられないだろう」という見方が上がり、後任の幹事長には、細田氏の昇格や高村正彦・副総裁の“降格”、さらに二階俊博・総務会長の名前や、菅義偉・官房長官の幹事長起用という大型人事まで取りざたされている。
なかでも、「チャンスが回ってきた」と幹事長就任に意欲を燃やしたのが岸田文雄・外相だ。岸田派議員がボスの背中を押す言い方をする。
「岸田さんは外務大臣の在任期間が3年半になる。悲願だったオバマ大統領の広島訪問を実現したことで、もう十分な実績をあげたという達成感があるようだ。『外相はもういいな』と漏らしている。
外相留任より、幹事長として党務をやりたいのが本音。幹事長として次の総選挙を仕切れば、間違いなくポスト安倍の一番手の地歩を固めることができるし、2年後の総裁選で一気に総理・総裁を狙える」
それに対して官邸の安倍側近からは、「よほどのことがない限り、谷垣幹事長の続投だ。病気ではなく事故だから、元気になれば、場合によっては当面車椅子でもいいじゃないか。幹事長職は務まる」という声があがっていた。
しかし、次の幹事長は二階氏に決まり、「岸田幹事長」は幻に終わった格好になった。
※週刊ポスト2016年8月12日号