──無縁墓になるのは忍びない。何とかする方法はないのですか。
「『墓じまい』という方法があります。といっても、単に古い墓石を撤去しておしまい、というわけにはいきません。その墓には先祖の遺骨が入っています。管理ができなくなったお墓を撤去して、中の遺骨を取り出し、新しいお墓に移すことを『墓じまい』というのです。核家族化、単身世帯の増加、子どものいない夫婦の増加、未婚・非婚化、離婚率の上昇など、家の永続性が保たれていない社会問題を背景に、『墓の問題は自分たちの代で解決したい』という声が大きくなりました。そのひとつが『墓じまい』なのです」
──確かに現代においては『墓じまい』は有効な方法ですね。
「ただ、簡単にすまないのが『墓じまい』の難しいところです。まず、費用も安く人気のある公営霊園は倍率が高く、中々当選しません。また、運良く当選したとしても、『墓じまい』をめぐって親族とトラブルになるケースも多いのです。特に本家・分家意識の強い地域などでは、『ご先祖様を縁もゆかりもない、ほかの場所に移動させるなんてとんでもない。この地域に眠ることに意味があったのだ』と言い出す親戚も多く、墓じまいがきっかけで親族同士の仲に亀裂が入ってしまうことが本当に多いのです」
──私の知り合いでも親族同士がもめたケースがありました。
「それと寺院との関係も複雑に絡み合ってきます。墓じまいをするということは、多くの場合、檀家をやめることになります。このことを離檀というのですが、お寺によっては『離檀するなら200万円を用意するように』と“離檀料”と称するお布施を要求されたり、『離檀料を払わないならば、改葬(お墓の引っ越し)に必要な埋葬証明は出さない』と脅迫まがいの圧力をかけるお寺も一部にはあります」
──お墓を巡る問題は本当に厄介ですね。
「そうですね、今では一般化している散骨にしても、自治体によっては条例で禁止しているところもありますから注意が必要です。それに民間霊園の場合など、指定の石材店で墓石を買わないと墓地を購入する権利がないというケースも多いです。一般の人にはあまり知られていない”掟”のようなものがたくさんあります。まずは膨大な情報を整理して頭に入れていくことが最も大切だと思います」