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金メダリストへの「スッキリポーズ」要請は場違いではないか

喜びを分かち合えばそれでいいのではないか(写真:アフロ)

 おめでたい状況だから何を要求しても許される、というわけではあるまい。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が、五輪中継で気になった点を指摘する。

 * * *
 8月9日早朝、柔道男子73キロ級の大野将平選手がオルジョイ選手(アゼルバイジャン)に勝利。美しい一本勝ちで金メダル獲得。日本中が沸きました。 決勝戦に勝った大野選手はしかしその瞬間、バンザイのポーズも、喜びの感情もむき出しにしなかった。

 静かに自制。まずは礼。試合場から降りて、やっと笑顔がこぼれた。柔道の「美しさ」を、大野選手の「静けさ」がそのまま表現していたように感じました。

 ガッツポーズをするのは、自分のことしか考えていない、ということ。

「相手がいる対人競技なので、相手を敬おうと思っていました。冷静に綺麗な礼もできたのではないかと思います。日本の心を見せられる場でもあるので、よく気持ちを抑えられたと思います」と大野選手は試合後のインタビューに答えています。

 柔道の祖である嘉納治五郎は、「相手に勝つだけでは何の価値も無い」「力が第一義ではない」と教えてきたといいます。「道」という一字の中に、「生き方を学ぶ」という深い意味が込められている、と柔道家・山口香さんに聞いたことを思い出しました。

 そうした本物の「柔道」の実践者となるべく心と頭を鍛え、鮮やかで気持ちのよい一本勝ちにこだわり、「強さと美しさ」を考えつつ日々、厳しい練習を重ね自らを磨き上げてきた、礼節のトップアスリート。

 その大野選手が金メダルを獲得してわずか数時間後。日本のテレビが、ご本人にある要求をしたのです。

「スッキリポーズをお願いします」

 日本テレビ朝の情報バラエティ番組『スッキリ!!』に、リオのスタジオから大野選手が出演した際。いきなり、腕を前に突き出すような番組特有のポーズを、なんとレジェンドにやらせたのです。一緒に出演した銅メダルの松本薫選手にも。しかも、一度ならず二度まで。コーナーの最初と最後に! びっくり。

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