「僕が一生懸命勝たせようと思ってやってることを、Qちゃんは全て受け入れてくれたの。命がけでね」

 ところが、高橋が独立した後のこの10年余りは、全てを受け入れてくれる選手とは出会えなくなっていった。

「本当にやりにくくなったよね。人種が変わったようだよ。昔は弱い子でも五輪に行きたいと言ったもんだけど、今は給料貰えて適当にやれればいいという子が増えた。いくら引っ張っていこうとしても、私はやりません、と。そういう時代だよ。会社も監督の言うことを聞くように仕向けてくれればいいけど、選手の言うことを聞いちゃう。お恥ずかしい話、俺も少し優しくなって周囲のご機嫌とるようになったら、いい選手が出なくなっちゃった」

──もうやめよう、と思ったことは?

「いや、俺はしつこいから。じーと待ってた。本当に俺は陸上が好きなんだよ! 駆けっこを取られたら死んだほうがいいと思ってやってきたから」(文中敬称略)

【PROFILE】こいでよしお/1939年、千葉県生まれ。順天堂大学体育学部卒業。卒業後は23年間、市立船橋高などで教鞭をとり、全国高校駅伝にチームを導く。1988年より実業団で指導。有森裕子、高橋尚子などメダリストを輩出した。2002年に佐倉アスリート倶楽部設立。

●聞き手/高川武将(ルポライター ) 撮影/横田紋子

※SAPIO2016年9月号

関連記事

トピックス

元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬の宮城野親方
元・白鵬の宮城野部屋を伊勢ヶ濱部屋が“吸収”で何が起きる? 二子山部屋の元おかみ・藤田紀子さんが語る「ちゃんこ」「力士が寝る場所」の意外な変化
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン