日本では様々なものが擬人化されるが、数年前、駅が擬人化され漫画やアニメなどに発展したことがあった。駅にはそれぞれ歴史をもった固有の名前があるため、擬人化しやすい性質を持っているともいえる。ところが、社会が変化すると、その固有名詞を変更することもある。業平橋駅や松原団地駅など、駅名変更にこめられた事情や思いについて、フリーライターの小川裕夫氏がリポートする。
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NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で主演を務め、爆発的な人気となった能年玲奈さん。このほど、”のん”と芸名を改めて、再出発することが発表された。芸名を変更することでイメージチェンジを図り、それを機に再ブレイクを目指す芸能人も少なくない。
鉄道の世界にも似たようなケースがある。日常的に使用していた駅の名前が、変わってしまうケースだ。近年の例を挙げれば、2011(平成23)年に富士急行が富士吉田駅を富士山駅に、2012(平成24)年に東武鉄道の業平橋駅がとうきょうスカイツリー駅にそれぞれ変更された。
一見してわかるように、これら駅名改称は有名な観光地の名前を拝借することで、PR効果を得ようとする狙いがある。
他方で、それらとは微妙に異なる理由で駅名が変更されるケースもある。
東武鉄道の松原団地駅は、1962(昭和37)年に開業。同駅は、東洋一とも形容されるマンモス団地・草加松原団地の最寄駅だったため、利用者の大半は団地の住民だった。高度経済成長で人口が急増していた東京圏では、住宅不足が深刻化。東京に近接する埼玉県草加市などは、その受け皿として機能した。
日本の経済成長を支えた松原団地は、21世紀に入ると役目を終える。2003(平成15)年には都市再生機構が団地の建て替えに着手。草加松原団地は団地マニアが喜ぶような昭和テイストを残していたが、再開発で駅前の風景は一変した。
大変貌を遂げた松原団地駅前だったが、それでも松原団地駅という駅名は残った。しかし、松原団地駅にも変化の波が押し寄せる。2017(平成29)年春をメドに、東武鉄道が松原団地駅を「独協大学前(草加松原)」へと改称することを発表したのだ。
「松原団地駅の駅名を改称しようという動きは、2008(平成20)年の市制施行50周年事業からスタートしています。草加市内には4つの駅がありますが、今後の市の発展を考えるうえで駅名について検討されることになりました。草加商工会議所を中心にして松原団地駅名変更協議会が設立されることになり、同協議会が市民からも意見を聞くなどして、駅名改称を働きかけることになったのです」(草加市総合政策課)
団地が消えてしまった今、駅名がそぐわなくなったから変更を働きかけるといった事情は理解できる。しかし、駅名を改称するには駅名看板の取り換えや券売機などのシステム変更、路線図の書き換えなどの作業が発生する。それらには、莫大な費用がかかる。
駅名改称の費用はまだ明確にされていないが、東武鉄道は関東私鉄ではもっとも規模が大きいだけに駅名改称の影響は広範囲にわたる。当然、駅名改称の費用も大きく膨らむ。