◆2校は完全なライバルになった

 とはいえ、このところの横浜初等部の評価はうなぎ登りである。その理由は、幼稚舎とは異なる教育方針による。

 幼稚舎では伝統的に「勉強は家庭の責任」とされ、まったく宿題を出さないクラスも多いと聞く。これに対して横浜初等部ではしっかり勉強させる方針で、宿題も1年生から出るという。

 実際、幼稚舎の卒業生が普通部・中等部の勉強についていけず、ドロップアウトする例が珍しくない。そうした親の不安を、横浜初等部は解消してくれる。今では幼稚舎と横浜の両方に合格すると、横浜を選ぶ子供も少なくない。2校は完全なライバル校になったといえる[編集部注:これらの点について慶應義塾広報室に確認したところ、回答が得られなかった]。

 創設者・福澤諭吉が唱えた、塾生同士が助け合う「社中協力」が慶應義塾の伝統。OB組織・三田会の強固なつながりは、それが体現されたものだ。反面、社会に出てからもOB同士でまとまる傾向があるために、慶應内部での細かい序列意識が助長されるのもまた事実。「人の上に人をつくらず」と唱えた創設者の言葉を、もう一度捉え直してみる時期なのかもしれない。

【PROFILE】石井至●1965年北海道生まれ。東京大学医学部卒。小学校受験・幼稚園受験のための「アンテナ・プレスクール」校長。『慶應幼稚舎と慶應横浜初等部』(朝日新書)など著書多数。

※SAPIO2016年9月号

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン