特徴は土台とインプラント本体が一体化した構造だ。価格は欧米メーカーの半額以下。手術は一回で済む。
筆者が潜入取材した都内の格安インプラントセンターでは、欧米のツーピースが20万円に対して、国産のワンピースは一本7万円。隣にいた中年女性はワンピースを指定していたので、一定の需要はあるらしい。しかし、小宮山氏は次のように警告する。
「ワンピース・インプラントを使う歯科医は経験の浅い、いわば素人でしょう。なぜなら、ワンピース・インプラントは土台と一体化しているので、角度の微調整などの融通性がない。
一番大切なのは、骨の中に入って結合しているインプラント本体です。噛み合わせで強い力がかかって上部の土台が壊れても、本体が守られていればリカバリー(修理)が可能ですが、ワンピースは全てダメになる可能性が強い。それなのに、簡単で安いシステムに、多くの歯科医が飛びついています」
小宮山氏に、正しいインプラント治療を行なう歯科医を見分ける術はあるのか尋ねると、しばらく沈黙してから口を開いた。
「難しいですね……。9年前、インプラント治療で死亡事故を起こした歯科医は、“患者を逃がさない術は、早くお金を振り込ませて、早くインプラントを埋める。そうすれば患者は逃げない”と言っていました。
だから、インプラント治療を検討している人は、何人かの歯科医に必ず意見を聞くべきです。すぐに手術したほうがいいと急がせる歯科医は、誘導している可能性があります」
インプラント治療の第一人者の小宮山氏が、あえて明かした業界の問題点。それほどまでに闇は深いのだ。
●文/岩澤倫彦(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2016年9月2日号