「道子さんには2人から『具合はどう』ってよく電話があったそうです。道子さんは、『2人とも忙しいのにいろいろと気にかけてくれる』って喜んでいました。彼女の口癖は『私はあの2人を育てるために生きてきたようなもの』。立派に育ってよかった、誇らしいとお感じになられていたのではないでしょうか」

 実家の近所に老舗のパン屋さんがある。道子さんはいつもそこで、幼い兄弟に好物の「ポテチパン」を買った。コールスローに砕いたポテトチップスを混ぜてパンにはさんだものだ。兄弟は成人した後も多忙な合間をぬって、しばしばこの3人の思い出の味を買い、足の調子の悪い道子さんに届けたという。純一郎はこう締め括った。

《休みのときに出かけるときは、いつも家族一緒に。その中心的支えをしてくれたのが、故人・道子でありました。もちろんいつも近所のかた、お茶をたしなんでいるかたがた、そして、小泉家に携わる多くの皆様の温かいご支援があったからこそ、最後まで、死ぬ直前まで、意識がはっきりと安らかに永遠の眠りについた。大変、代えがたいことだと思っております。泉下で故人も手を合わせて感謝していると思います》

 弔辞が終わると孝太郎はこらえ切れず大粒の涙をこぼした。進次郎はうつむき、目元を人差し指でそっと拭った。この後、2人は寄り添って祭壇に白いカーネーションを捧げ、頭を下げた。最愛の「ママ」との最後の別れの瞬間、兄弟は、なかなか顔を上げなかった。

※女性セブン2016年9月15日号

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