──建築以外で、世界的に見て日本人のレベルが高いと思う分野はありますか。
隈:今ならば料理が突出していますね。料理においても、素材に対する日本人のセンシティブな感性が発揮されていると思います。今、世界がフランス料理に典型的なアーティフィシャルな(人工的な)ものに飽き足らず、素材の特性や自然の力をどう引き出すかを重視する方向に向かっている。建築、料理で日本人が活躍している背景には、そうした時代の流れがあると思います(本書によれば、レストラン部門でも料理人部門でも、日本はフランスに次いで2位)。
──アメリカ、イギリスはノーベル賞の受賞者数や大学のランキングといったトップレベルでは圧倒的な強さを誇るが、平均レベルを示す一般人や中学生の学力が低い。それに対して日本は、そのどちらもレベルが高く、結果として「基礎知力系」で総合1位です。
隈:一般の人の知的レベルが高いことと、自己主張を抑えて全体のために貢献しようとする性質とで、日本人のチームワークは世界一です。僕の設計事務所は東京、パリ、北京、上海にオフィスがありますが(全200名ほど)、日本人が中心となる東京オフィスが仕事の生産性が高い。外国人が中心の他のオフィスは個人プレーが目立ち、効率がちょっと落ちます。それはそれで楽しいのですが(笑)。
──その一方、「フォーブス」「タイム」「フォーチュン」などが選ぶトップリーダーランキングでは、日本は6位に沈みます。
隈:今、世界の中で日本企業の力が相対的に落ちていますが、その大きな原因はチームワークの上に立つ突出したリーダーが不在であることでしょう。それに比べると中国では、個人プレーが多く、みんなバラバラですが、面白いビジョンを掲げ、強引にでもみんなを引っ張っていこうというリーダーにいっぱい会います。
僕は今、中国のディベロッパーから依頼され、海南島でミュージアムの設計をしているんですが、向こうの市の書記と会ったら、今の日本にはまずいないような、びっくりするほどユニークな人物でしたよ。