また、予約サイトをはじめオンライン上の旅特集などでも、ホテル・旅館ランキングを目にする。部門別・地区別など特定のテーマに沿って選出されたケースが多い。お金で票を買う的な広告企画から、筆者や編集部が独自に選出したランキングもある。
中には利用者からの口コミ評価も著しく低いホテルが、某予約サイトのランキング特集で1位になることもある。よくよく見てみると「売れ筋ホテルランキング」だという。売れ筋ということは予約の寡多という予約サイトのデータで決められたものだ。
前述したプロが選ぶ日本のホテル・旅館100選においてランキング上位の施設は、多くの団体客の受け容れも可能な大規模施設が目立つ。団体客の送客も行う旅行会社が選ぶランキングという特性だろうか。旅館で格別なおもてなしの心を感じたいという個人客であれば、もちろん小規模な旅館にも分がある。
もっとも加賀屋に対する業界目線ということならば、福利厚生が充実していることで知られる。
たとえば、女性スタッフが子育てながら働けるよう、8階建ての専用施設(カンガルーハウス)を有するのは業界では有名だ。施設内には保育園、母子寮が設けられているが、保育所不足が社会問題となる中、参考にすらなりそうな福利厚生スキームといえる。こうしたことも、加賀屋が業界関係者に支持される一因とも言えよう。
いずれにせよ、利用者目線・業界目線さまざまなランキングがあり、単に「日本一」という言葉が独り歩きしている感はあるが、各種ランキングの特性を見極める必要があるのは言うまでもない。つい順位だけに注目してしまうが、旅の目的や嗜好も踏まえて宿選びの参考にしたいものだ。
●文/瀧澤信秋(ホテル評論家)