そもそも缶コーヒーの全体市場は長らく横ばい(3億5000万ケース前後)が続いており、頭打ちとの指摘は根強い。限られたパイの中でシェアの奪い合いを強いられてきたため、下位ブランドが新商品で一発逆転を狙える可能性が低かったことは確かだ。
しかし、ここにきて缶コーヒー市場に2つの追い風が吹いている。そのひとつが「ボトル缶」の人気だ。
「ショート缶は消費税の値上げに伴い130円になったことで消費者の割高感が強まっているのに対し、ボトル缶は容量も多いうえに、フタがついているのでダラダラチビチビ飲むことができると好評です。
2013年にボトル缶がブレイクした時には無糖ブラックが主流でしたが、最近は砂糖・ミルク入りのスタンダードタイプやカロリー控えめの微糖、カフェオレなど種類も揃ってきたので、ボトル缶人気が缶コーヒー市場を押し上げる可能性はあります」(前出・宮下氏)
すでにボトル缶の出荷数量は年々伸び続け、約7000万ケースと全体の20%を超えるまでになっているという。今後は従来のショート缶からボトル缶に主戦場を移し、激しいシェア争いが繰り広げられることになるだろう。もちろん、キリンビバレッジにもチャンスはある。
もうひとつの追い風は、一世を風靡したコンビニのカウンターコーヒーの勢いが鈍化していることだ。
「淹れたての味わいや物珍しさもあって、一時は通勤時間帯に“コンビニコーヒーラッシュ”まで起きていましたが、最近は並んでまで買うのは面倒くさいと缶コーヒーを選ぶ人が増えています。缶コーヒーも進化して、コクや香りの強いプレミアム商品が浸透してきましたからね。
コーヒーの国内消費量自体は伸び続けているため、缶コーヒーがショップやカウンターコーヒーに対抗する余地は十分に残されています」(宮下氏)
さて、キリンビバレッジが仕掛けた秘密の試飲キャンペーンが、秋冬のコーヒー戦線にどんなインパクトや変化をもたらすのか──。まさにフタを開けるまでは分からない。