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キリンビバ 発売まで「商品名秘密」の缶コーヒーを配る理由

「味の真剣勝負を挑む」と堀口英樹・キリンビバレッジ社長

「10月4日、缶コーヒーの常識が変わる。」──キリンビバレッジが、白無地のショート缶に商品名ではなく、こんな宣伝文を印字したコーヒーのサンプル品を大量配布している。

「シークレットサンプリング」と名付けられたこの試みは、同社が缶コーヒーの新商品を発売するにあたり、敢えて商品名やパッケージデザイン、製法などを伏せたサンプル品を全国7か所に設置した専用の自動販売機にて100万本無料で配り、試飲した人たちの反応や評価を確かめようというもの。すべての情報を公にするのは、発売1日前の10月3日だ。

 本来、新商品の宣伝は、事前に商品名や味の特徴などを繰り返し露出させることで認知度を高めていくものだが、同社がこのような奇をてらったマーケティング手法に打って出たのはなぜか。堀口英樹・キリンビバレッジ社長はこう説明する。

「缶コーヒーユーザーの声を聞くと、『CMの世界観』とか、『目につく商品を選ぶ』など、味に対する興味が薄れている傾向も見受けられます。

 そこで、新商品の“自信の味”にもっとフォーカスして、真剣勝負をするにはどうしたらいいかと考えました。その結果、サンプル品は様々な先入観をなくして飲んでもらいたいと、発売まで商品情報を明かさないことにしたのです」

 もちろん期待感を煽り、注目度を高める効果も狙っての戦略だが、純粋に消費者の味覚に訴えられなければシェアの拡大が望めないほど、缶コーヒー市場はブランドの優勝劣敗がはっきりしてしまっている。飲料総研の宮下和浩氏がいう。

「缶コーヒーを飲んでいるヘビーユーザーは、いつも決まった商品しか買わず、たまには飲んだことのないブランドに冒険してみようという“ブランドスイッチ”が起きにくいコンサバな市場です。そのため、上位メーカーの不動ブランドからシェアを奪うのは至難の技なのです」

 不動ブランドとは、日本コカ・コーラの「ジョージア」とサントリー食品インターナショナルの「ボス」のことである。飲料総研が調べた両ブランドの出荷数量(2015年)は、ジョージアが1億490万ケース、ボスは8400万ケース(※1ケースは190g×30本換算)と圧倒的な強さを誇る。

 一方、第三極につけるアサヒ飲料の「ワンダ」は4060万ケース、キリンビバレッジの「ファイア」は2700万ケースと、上位2ブランドに大きく水を開けられている。この牙城を少しでも崩すためには、試飲でもとにかく手に取ってもらい、消費者に味の違いを感じてもらうしかないのだ。

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