現在、自宅での死は困難だ。日本では1950年代前後まで自宅で最期を迎える人の割合が8割を超えていたが、徐々に病院や診療所が自宅を上回るようになった。

 2012年の内閣府の意識調査では、最期を迎える場所の希望として「自宅」が最多の54.6%だった。自宅で死にたい人は多いが、実際には、そうはいかない現実がある。

 超高齢化が進み、2025年には全人口の4人に1人が75才以上になり、死亡者数も右肩上がりの「多死社会」がやってくる。そのとき、私たちは自ら望む「臨終の場」を手に入れられるだろうか。

 今夏、厚生労働省(以下・厚労省)が公表した統計が話題を呼んでいる。それは死亡者全体のうち、自宅で亡くなった人が占める割合を全国1741市区町村別にまとめた初めての集計だ。

 死亡場所の全国平均は「病院」「診療所」などが77.3%と圧倒的に多く、「自宅」はわずか12.8%だった。「自宅で死にたい」と願う人が5割を超えるなか、現実は望みどおりにいかないことがデータでも裏づけられた。

 さらに衝撃的だったのは、在宅死における地域格差が顕著だったことだ。本誌は厚労省発表をベースにして、人口10万人以上の自治体における在宅死の割合をランキング化した。

 1位は神奈川県横須賀市の22.9%、その後、東京都葛飾区(21.7%)、千葉県市川市(21.5%)、東京都中央区(21.5%)が続く。逆に在宅死が少ない自治体は、1位が石川県小松市(6.7%)で、北海道江別市、埼玉県加須市、福岡県筑紫野市が続いた。

 人口5万人以上10万人以下の中規模自治体では、在宅死の割合が最も高い兵庫県豊岡市(25.6%)と最も低い愛知県蒲郡市(5.5%)ではより大きな格差が見て取れる。

 大きな地域格差を生む要因として、地域の医療体制の充実度の違いがあげられる。

 在宅医療を行う施設は、前出の小笠原内科のような24時間体制の在宅療養支援診療所、在宅療養支援病院がメーンとなる。とくに、全国に約1万4000施設ある在宅療養支援診療所は地域により密着した医療を提供することができるため、その役割は大きい。

 厚労省の集計を見ると、全国の自治体の約3割にはこうした診療所がない。このうち半数の自治体は北海道と東北にあり、面積の広さや積雪などの自然要因がネックになっていると推測できる。

 また、人口当たりの病院数が多い地域では、在宅死の割合が低い傾向もあった。

 気をつけたいのは、本データの在宅死には、医師による死亡確認場所が「グループホーム」と 「サービス付き高齢者向け住宅」の人も含まれることだ。自殺、事故死、自然死も在宅死に含まれるため、厚労省の担当者は「都市部の在宅死は、実は孤独死というケースもあると思われる」と述べる。

 実際、東京23区では孤独死が在宅死の実に35%を占めるという指摘もある。

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