「細胞診は、例えるならば白い食パンに爪楊枝を刺して黒いカビを探すようなもの。取るものがすごく少ないから、はっきりとわからない場合もあります」(土井さん)
また、これらの検査は、疑いがあるからといって乳腺専門医以外では簡単に受けられるものではない。細い針を刺し、比較的負担のかかりづらい細胞診ですら嫌がる医師もいる。
医療ジャーナリストで、自身も乳がん経験者である増田美加さんはこう分析する。
「1000人がマンモグラフィー検査を受けたとして、再検査になる人は80人。そしてそこからがんとわかる人は5人。このような低い確率のため、専門医以外の医師は大がかりな精密検査をしたがらない傾向にあります。
また、乳腺の専門医であれば、経験も豊富でその場ですぐに細胞診をすることもできますが、専門医でなかった場合、見過ごしてしまったり、はっきりとわからず『とりあえず経過観察に』と判断してしまう場合もあります」
組織診はさらに負担を伴う検査となる。
「組織診は局所麻酔をして太い針を刺すので、小さな手術をするようなもの。特に、妊娠・授乳中に組織診をすると、乳汁漏といって皮膚から乳汁が漏れるなど乳房にダメージを与えることもあり、悪化すると乳汁に血液が一時的に混じることもあります。もちろん、それによってがんが大きくなることは100%ないですが、体に負担がかかるのは事実です」(土井さん)
2011年に乳がんと診断され、2度の再発の後、右乳房を全摘出した生稲晃子(48才)は、再検査のつらさを振り返る。
「身体的にいちばんつらかったのは、再検査での細胞診。麻酔もなく、胸に何度も針を刺されるのはかなり痛く、本当に堪えました。もちろんがんなのか、がんじゃないのかを判定するために非常に大切で重要な検査であることはわかっているのですが…」
そもそも若い世代にはほとんど乳がん患者がいないから。特に授乳中は乳腺症が起こりがちだから――そんな“常識”のもと、痛みを伴う生検は「経過観察」という言葉にとって代わり、若年性乳がんは、医師からも、患者からも、初期の段階で見落とされる傾向にあるのだ。
※女性セブン2016年10月13日号