国際情報

ポスト朴槿恵を選ぶ大統領選で50万の「在日票」はどう動くか

在外投票はいまだ浸透せず(2012年国会議員選、韓国大使館)

 世界700万人。日本に約50万人。在外韓国人(韓僑)の概数だ。韓国大統領選において日本国内に住む数十万という票田は勝敗を揺るがしかねない。2009年、在日韓国人を含む国外の韓国人に本国国政選挙の投票権が認められた。しかし、有効活用されることなく、韓国と在日社会の“分断”の象徴となっている。

 このように投票経験のない若者にいかに、動機付けを促すか。そこには韓国側の戦略も問われるが、前出の研究者は、在外投票の広報活動に国家が本腰を入れていない、と指摘する。

 その理由として、「朴槿恵大統領の政権運営に在日票が援護射撃になると思えない。あえて広報活動を控えているのではないか」との勘ぐりまで生まれている。

 朴槿恵大統領を輩出した政権与党のセヌリ党は、日本でいえば自民党に相当する保守政党である。一方で、日本で在外投票の実現に奔走したのは、金大中元大統領への共鳴者が多い。つまりはリベラルで多文化主義を求める人々だ。韓国の国政選挙は、常に保守派とリベラル派が拮抗する。団体票は脅威となる。

「在日票を警戒した韓国政府の意を汲む民団が、バスをチャーターして投票者を運ぶ際、車中で政権側への投票を指南していたといった噂まで生まれている」(在日問題に詳しい韓国在住の日本人研究者)

 こうした情勢を受けて、韓国では、在外投票を「税金の無駄遣い」と非難する声も出始めた。韓国社会との架け橋になるはずの在外投票が、かえって「溝」を際立たせてしまったのは、皮肉である。今後、在日韓国人は、在外投票をどう活用すべきか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン