祖父母やご先祖様の時代から通って来たという自負のあるお得意さんなどにしたら、ぎすぎすした街で、多国籍言語が飛び交う接客ばかりになってしまった店に“なんでこんなところで買わなきゃいけないんだ”と愛想も尽かすでしょう」(平野さん)
爆買いの爪痕とともに、デパートを苦しめる存在が「駅ビル」だ。デパートの凋落ぶりとは対照的に右肩上がりを続けるのは、JR東日本グループ会社が運営する『ルミネ』。今年3月期の店舗売上額は3255億円と、過去最高を記録した。
「中央線沿線に住んでいるので、会社帰りに新宿のルミネに寄ることがほとんど。セレクトショップも入っているから服も買えるし、話題のスイーツがそろっているから、手土産を買うときも重宝しています。
昔は銀座のデパートに通っていましたけど、最近は全然行ってないですね。デパートが駅から徒歩5分でも、こっちは駅直結ですからね。なんだか面倒になっちゃって」(吉田知子さん・仮名・41才)
同じく新宿の名所となりつつあるのが、今年3月にオープンした、ルミネの新施設NEWoMan(ニュウマン)。朝4時まで営業している飲食店がある使い勝手の良さに加え、パリ生まれのシュークリーム専門店『シュー・ダンフェール パリ』や、LA発の『800°ディグリーズ ナポリタン ピッツェリア』など、日本初上陸の店が多く人気を集めている。
「小売業は立地が命です。デパートと同じ要素を持つ施設が、利便性のいい駅にできてしまえば、顧客をとられてしまいます。とくに総菜やスイーツといった“食品”や“化粧品”など女性の個人消費は不況下でも安定したドル箱分野でしたが、駅ビルで簡単に手に入るとなり、百貨店の“ドル箱”が侵食されています」(前出・平野さん)
「業績悪化は肌で感じている」と話すのは、大学卒業後に大手デパートに就職し、現在は関東圏の店舗に勤める林奈央子さん(仮名・50才)。
「“正月を家族と過ごすため”という名目で、去年から1月2日の初売りをやめて絶賛されている同業他社さんがあるのですが、内情は違うそうです。営業しても人件費や光熱費を上回る売り上げがないから、閉めたほうが得だと判断したからです」(林さん)
現場に吹くすきま風は、買い物客をも冷やしていて…。
「お気に入りの靴が汚れてきたので、久々に新しい靴を買おうと思ってデパートに行こうと思ったんだけれど、人混みに出るのがなんだか億劫で…そんなときに『ネットショッピングでも試着・返品可能』というサービスがあったからそっちにしちゃいました」(渡辺京子さん・仮名・35才)
京子さんのように、ネットショッピングを利用する人が増えている。2015年の総務省調査によると、ネットショッピングをしている人の割合は2002年には5.3%だったが、2015年には27.6%と、5.2倍になっている。同省の別調査によれば1位は「実店舗に出向かなくても買い物ができるから」(73.7%)という理由だった。
※女性セブン2016年11月3日号