俳優デビューの翌年、映画「若大将」シリーズがスタートして一気にスターダムに駆け上がった加山には下積みの経験がない。小さなステージに慣れていないのはそのせいで、ケネディハウス銀座の定期公演は「いい訓練場なんです」と笑う。
現在の音楽活動の中心は、ワイルドワンズのメンバーで構成されたハイパーランチャーズの他に、総勢13人の「THE King ALL STARS」。古市コータロー(THE COLLECTORS)や佐藤タイジ(シアターブルック)、キヨサク(MONGOL800)など、音楽界の第一線で活躍するミュージシャンで編成されたロックバンド。加山と最年少メンバーとの年の差は、実に48歳という。
「完全に孫の世代ですよ(笑い)。でも、話が合わないなんてことはありません。昔と今のロックの違いについて話して盛り上がったり、音楽以外の話題でも妙にウマが合うんです」
ステージに上がれば年齢は関係ない。音楽を通じて意気投合し、気心の知れた仲間同士ゆえ、簡単な確認をするだけで、イメージ通りの演奏が阿吽の呼吸で始まる。
「僕はね、本当はロックが好きで音楽を始めたんです。でも、デビューした当時は『イメージが違うから英語の歌詞なんてダメだ』といわれて悶々としていたところに、『君といつまでも』が大ヒットして、それが僕のイメージになった。だから今、やりたいことがやれて毎日最高です」
●かやま・ゆうぞう/1937年、神奈川県横浜市出身。1960年に映画『男対男』でデビュー。翌年、若大将シリーズ第1弾『大学の若大将』に主演。1962年、黒澤明監督『椿三十郎』、1965年同『赤ひげ』に出演。同年リリースの『君といつまでも』がレコード大賞特別賞を受賞。2014年に結成したTHE King ALL STARSでフジロックフェスティバルに出演。今年、画業20周年を迎えた。「画業20周年記念 加山雄三アートの世界展」が10月27~30日/大丸心斎橋店北館14階イベントホール、11月23~28日/高島屋日本橋店8階特設会場で開催される。
■取材・文/小野雅彦 ■撮影/二石友希
※週刊ポスト2016年11月4日号