「2年ほど前は北欧ブームでしたが、和食ブームもあって今は断然、和食器が注目されています。家で作って食べる方も増えているので、うつわにこだわる方も増えていますね。ちょっと値が張っても、いいものを長く使おうという風潮があります」
量産品と違って作家物の和食器は値が高めだが、若い人にもなぜ人気なのだろうか。窯元側にも敷居を低くする努力が見られる。加賀の高級食器の久谷焼は、好きな絵柄のシールを転写して焼き付けて、オリジナルの陶器が作れる『KUTANI SEAL』というラインを始めたり、長崎の波佐見焼は、食器ブームの先駆け的に、シンプルでカラフルな見た目がかわいい『HASAMI』を展開して人気となった。
「作家物でも、パステルカラーやマットな質感など、若い人にも受け入れられるデザインの和食器が増えています。食パンに目玉焼きを乗せただけでも美味しそうに、おしゃれに見えるところが受けていますね。イイホシユミコさんは、色や形がかわいいと女性にとても人気です。小澤基晴さんも若い人に大人気でなかなか買えませんし、益子焼の佐々木康弘さんや寺村光輔さんも人気がありますね」
中でも圧倒的に人気なのが、素朴な温かみのあるうつわを作る余宮隆さんと、インスタ映えする花の形の「輪花」が人気の高島大樹さんだという。手に入り難い高島さんのうつわの個展には、徹夜で並ぶ人もいるほど。
「体験」ブームの今、“自分でやってみる”に価値を置く流れは、ますます色濃くなってきているという。男性のうつわファンが増えている理由も、ここにあるようだ。
「料理する男性が増えていることも理由のひとつで、男性ってあえて時間をかけるとか、いい食材を使うとかすごくこだわるところがあるので、うつわにもハマるのだと思います。自分で豆を挽いてコーヒーを淹れたいだとか、アウトドア用品を買うことが流行ったのと同じ種類の“好き”で、うつわも取り入れているように思います」
今、“オリジナルなものが作りたい”“無骨なのがかっこいい”という流れから、陶芸教室に行きたい人も増えている。体験型ブームもうつわ人気を後押ししているようだ。