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「期待はずれのドラ1選手」の言葉は仕事術にも通じる

たまにはアドバイスも聞いて(写真:アフロ)

「仕事の話を野球でたとえるのはおっさんの証拠」と若い人は嗤う。だがそれのなにが悪い? 野球はそれだけ偉大なスポーツなのだ。ドラフト一位で期待はずれに終わった元プロ野球選手たちの言葉を通じて、フリーライターの神田憲行氏が考える。

 * * *
 この原稿を書いているとき、日本シリーズで日本ハムの西川遥輝選手がサヨナラ満塁ホームランを放った。彼を見るたびに「こいつドラフト2位なんだよなあ」と思う。1位はあの斎藤佑樹投手だ。斎藤を腐すつもりはなく、高一から甲子園で取材していた西川があのハンカチ王子の次の評価を受けたことが感慨深く、またこうしてレギュラーで出場していることにスカウトの眼力の高さを思わされる。

 ドラフト下位指名は素材採用というか、「将来モノになれば」という感じで指名される選手もいるが、上位指名はそうはいかない。契約金も高いし、確実に出てきて貰わないと困る。困るのだが、現実はなかなかそうもいかず、不本意な成績でユニフォームを脱ぐ選手が現れる。「期待はずれ」という罵声とともに。

「期待はずれのドラフト1位 逆境からのリベンジ」(元永知永著、岩波ジュニア新書)は、そうした期待に応えられなかったドラフト上位指名の元選手たちの言葉を集めた本だ。まずこの手の本が「岩波ジュニア新書」から出たというのが面白い。同新書は「ジュニア」と名前は付いているが大人が読んでも十分な深い内容の新書も出しており(茨城のり子の「詩のこころを読む」は名著である)、本書も子どもに親しみやすい口語体で書かれながらも、元選手たちの言葉は働いている者の心を掴む。

 登場するのは水尾嘉孝(1990年横浜大洋ホエールズ1位)、的場寛一(1999年阪神タイガース逆指名)、多田野数人(2007年北海道日本ハムファイターズ1位)、江尻慎太郎(2001年日本ハムファイターズ自由獲得枠)、河原純一(1994年読売ジャイアンツ逆指名)、藪恵壹(1993年阪神1位)、中根仁(1988年近鉄バファローズ2位)である。

 辞めた経緯もその後の人生もさまざまだが、通読して選手としてうまくいかなかった原因にひとつの共通項があるように感じた。それは監督・コーチとの人間関係である。とくに下りてくるアドバイスにどう対処するか。著者も登場人物も「アドバイスを聞きすぎてもダメ。聞かなさすぎてもダメ」と繰り返し語る。

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