国際情報

嫌われ者同士の大接戦となった米大統領選 米国民の複雑感情

予想を覆して大接戦を演じたトランプ候補(公式HPより)

 投票日前日の支持率は、ヒラリー・クリントン(69才)が45%、ドナルド・トランプ(70才)が41%。まれに見る「大接戦」になったアメリカ大統領選。

 とはいえ、どうしてそんなに接戦になったのか、ピンとこない日本人も多いだろう。ある調査によると、「日本人が選ぶ米大統領」はヒラリーが9割、トランプはたったの1割だったという。

「ヒラリーは史上初の女性大統領候補だから、女性人気があるのでは?」というのは大きな勘違い。これほどまでに選挙がもつれてしまった理由は、簡単にいえば、どちらも“超”のつく「嫌われ者」だからだ。

「暴言王でセクハラ王のトランプ」が嫌われるのはわかるけど、なぜヒラリーが?

「アメリカ人の間では“エリート人種”、特に首都ワシントンでずっと政治家をやってきた人たちのイメージがすこぶる悪いんです。汚職にまみれ、利権ばかりを追求し、隙あらば国民の自由と権利を奪おうとする悪者…というのが全米の共通認識。だから、だいたいのアメリカ人はヒラリーのことを好きじゃない」(在米ジャーナリスト)

 エリート弁護士出身で、国務長官(日本でいう外務大臣)や上院議員を歴任し、夫のビル・クリントンが大統領の時には「最強のファースト・レディー」。長年、政界の中枢近くにいた彼女は、アメリカ国民の目には「悪の権化」のように映っているらしい。

 それは過去の大統領たちの経歴を見れば一目瞭然だ。カーター大統領は元ジョージア州知事で、レーガンも元カリフォルニア州知事。ジョージ・ブッシュも、ビル・クリントンもみんな州知事出身。「中央政界の腐敗」と関わっていないと思われたからこそ、大統領になれたのだ。例外は元上院議員のオバマだが、彼は新人議員だった。

 そして、「ヒラリー嫌い」の票は、もう1人の嫌われ者・トランプに流れた。「メキシコ人は強姦魔」「イスラム教徒をアメリカ入国禁止にすべき」などの暴言やセクハラ騒動に「なぜこんな人が大統領候補に?」と首を傾げた人も多いのでは。

「トランプが“過激発言”をすればするほどテレビは視聴率が取れたんです。だからメディアはこぞってトランプのニュースを流し、インタビューや公開討論を組んだ。結果、メディアはトランプ一色。いくらヒール(悪役)でも、あれだけテレビに出れば人気も出ます。あとは、それだけ“ヒラリー嫌い”が根強い証拠です」(前出・ジャーナリスト)

 選挙戦最終盤まで、支持率でトランプはヒラリーを上まわらなかったが、「それでもトランプが勝つ」という意見は多かった。その理由も、彼が“嫌われすぎていたから”だ。

「『隠れトランプ信者』がかなりいると見られていました。“トランプ支持と言ったらバカだと思われる”“もしかして会社をクビになるかも”という理由で公言できず、こっそりトランプを支持していた人たちです。それもあってますます選挙の行方が不透明になった」(前出・ジャーナリスト)

 ある意味で“究極の嫌われ者”同士の選挙戦になったというわけだ。そんな嫌われ者の新大統領で、アメリカはホントに大丈夫なの?

※女性セブン2016年11月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン