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11月11日はネット爆買いの日 日本企業も越境ECへ進出相次ぐ

越境ECに出品する株式会社クリスタルジェミーの中島香里社長(右)とアリババ株式会社の藤堂泰樹氏


 アリババが呼びかけて女性パワーブロガーを集めた上海でのイベントでは、中島社長がみずから商品の紹介をし、実際に同社の商品を体験してもらった。

「彼女たちの反応と拡散力、さらにネット上での反応を見て、商品力さえ伝わればやっていけると自信を深めました。今後は自社ブランドの認知度拡大を主に、外観にこだわる中国のお客さまに合わせた商品づくりも考えています」(前出・中島社長)

 外国の会社と国境を越えてネット通販で商品を購入する「越境EC」は、インターネットの普及とともに世界中で大きなトレンドとなっている。全世界の市場規模は2015年で1兆6700億米ドル(約175兆円、旅行、チケットの売上を除く)にのぼり対前年比で25.1%の成長率を記録し、2019年まで2桁成長が見込まれている(経済産業省調べ)。

 これほどの成長市場であれば、腰が重いといわれる日本企業もじっとしてはいられない。ポンパレモールやマツモトキヨシ、爽快ドラッグ、ケンコーコムなどの小売だけでなく、花王や小林製薬、ユニ・チャームなど日用品製造元など、続々と日本企業が中国越境ECに進出した。この動きを促しているのは、間違いなく他社に先駆けて出店した前出の企業による業績が、ケタ違いの記録を連発しているからだ。

 とはいえ、中国経済といえば明るい未来ばかりではないという報道も目立つ。しかし、越境ECに関しては間違いなく成長を見込めるとTS・チャイナ・リサーチ代表の田代尚機氏はいう。

「速さと口コミを重視する中国人と、ネット通販はとても相性がよいこともあって、日本に比べて中国はネットでの取引がとても多いのです。少し前までは物流網に不備がありましたが、現在では鉄道や高速道路が整備され物流センターが完成し、全国に商品を配達できる環境が整いました。その結果、ネット通販の利便性が増し、利用者は増えるばかりです。

 また、中国ではいま、若い人たちを中心に日本の商品がブームです。爆買いをきっかけに日本の品質管理の良さが知れ渡り、それがネットで拡散され、彼らは店舗ではなくネットで購入します。日本だとヒットのきっかけはテレビで、購入は店舗でとなりますが、中国の場合はネットで発信しネットで購入が多い。少し高くても高品質なものが欲しい中国の若い人にとって、日本の商品の人気はブームで終わらず、もう定着したといえるかもしれません」

 中国から日本を訪れる人は今年も増え続けているが、以前のような爆買いはみられなくなった。代わりに、みずから爆買いをした、もしくはお土産で知ったお気に入りの製品を、前出の「天猫国際」、業界2位の「京東全球購(ジンドン、JD WorldWide)」、女性向けフラッシュセールサイトの「唯品会国際(ビップ、Global VIP)」といった越境ECから繰り返し購入している。

 越境ECにおける中国での日本からの購入額をみると、2015年は7956億円にのぼった。対前年比で31.2%の伸びがあり、2019年には2兆3359億に達するとの推計がある(経済産業省調べ)。日本での爆買いは静かになったようにみえるが、ネットを介しての爆買いはこれからも続くとみられている。そして、今後ますます、越境ECに出店する日本企業が増えるのは間違いなさそうだ。

■撮影/山崎力夫

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