陽一:小池さんは一気に台風の目になったよね。言ってみれば、小池さんと都議会のバトルもポピュリズムの構図だと思う。その点、橋下(徹)さんと似ている。
旧態依然の体制を批判して戦うのは橋下さんが得意にしていたスタイルだったけど、彼がいなくなったから、そのスキームを小池さんがうまく活用しているように見える。
信彦:“都議会のドン”と呼ばれる内田茂(都議)は、自分が監査役を務める会社で東京オリンピック関連の巨額工事を受注していた。自民党東京都連幹事長の立場で、利権を漁っているということだろう? 彼がやっていることは明らかにおかしいが、メディアは「小池とのバトル」として面白おかしく伝えるだけ。問題の本質に迫っていない。
陽一:大衆が喜んで、盛り上がることしか話題にならないっていうことでしょう。 築地市場移転に関する話題もそう。メディアも大衆も盛り土、モリドって、まるで皆が“盛り土の専門家”になったかのように話しているけど、その裏には、もっと大きな問題があるはず。
さらに言えば、「盛り土問題の犯人捜し」よりも、アメリカの未来がどうなるのかのほうが、本当は国民生活にとって重要なはずだよね。 国民が納めた税金の使い途を考えてみたって、「盛り土」より、外交や安全保障に関連する部分が圧倒的に大きい。でも、国民は国際情勢について考えるより“小池知事のプロレス”を見たい。
世界の人々も同じで、どうでもいいことしか興味がない。ジャスティン・ビーバーが誰と付き合っているかにしか興味がないんじゃないの?(笑)
信彦:『そして、アメリカは消える』のエピローグでは、ローマ帝国がどのように崩壊したかについて書いた。一言で言えば、為政者が劣化し、市民も劣化したんだ。その時に起きたのは「パンとサーカス」、つまりポピュリズムの蔓延だった。強いリーダーがいなければ、市民も堕落していくという人類の劣化の法則は、その時と変わっていない。
このまま行くと、アメリカも日本も壊れてしまうと思う。
陽一:僕は、「1人の強いリーダー」というのは昔の“テレビの時代”のものだと思う。今は、もっと地方分権的とでもいうか、小さなコミュニティの中で強い人がたくさん出てくることが重要視されるべきではないかな。今は過渡期だと思う。たぶんいずれはそういうリーダーが出てくるんじゃないかと思う。
信彦:ここまで劣化した世界を元に戻せるかというと、非常に難しい。たとえばケネディ兄弟は、人を惹きつける魅力があり、タフさがあり、高い教養と素養を備えていた。そんな傑出した人材は世界を見渡しても残念ながら見当たらないし、簡単には出てこないだろう。
※SAPIO2016年12月号