円安によって輸入コストが上昇したこともあり、昨年以降、自動車や電機などの大手メーカーが海外生産の一部を国内に回帰させる動きが強まった。しかし、それは為替要因だけではない。
日本の生産現場だけが持つ技術力やノウハウといった「モノづくりの強さ」があらためて注目されている。
2万円超のトースターや3万円超の扇風機など、独自の高性能家電を世に送り出してヒットを連発している家電ベンチャーのバルミューダは、日本でのモノづくりにこだわる一社だ。
同社は2010年、自然界に近い風を作り出す扇風機「GreenFan」を発売。当初はコストの安い中国で生産してきたが、2014年に「メイド・イン・ジャパン」を前面に打ち出した「GreenFan Japan」を発売した。同社の広報担当者が説明する。
「中国の生産ラインはだいたい1人1 工程で長いラインを組むため、品質管理のためには開発担当者が生産現場に張り付かなくてはなりませんでした。そのための滞在コストや時間を考えると、必ずしも生産効率が高いとは言えなかった。
一方、日本では1人が複数の工程を担うのが当たり前で、驚くほど生産ラインが短く、生産効率は非常に高い」
さらに、日本の職人ならではの「匠の技」が活かせるという。
「製品の土台となる金型は何度も開発担当者との間でやりとりするものですが、日本でやれば“出戻り”が非常に少ないのです。図面の段階ではわからなかったコンマ数mmの差異などを老練の金型職人が目視や触覚で検知する能力がずば抜けて高いからです」(同前)
●文/入江一(ジャーナリスト)
※SAPIO2016年12月号
(11月16日に記事タイトルを変更しました)