田中:『蓮ニ鳥細工花瓶』は枯れた蓮の葉の横に生命力に満ちた蓮の実や花が生えています。そのギャップが躍動感を生み、より生命の瑞々しさが感じられます。
山下:実はこの蓮の実も動くのですが、そのあたりも香山らしい芸の細かさです。注目された虫食いの枯葉は、伊藤若冲の『動植綵絵』で象徴的なモチーフです。『氷窟ニ鴛鴦花瓶』での鴛鴦の表現法など、香山の造形は若冲作品と共通点のあることがわかります。
田中:それほど才能溢れる陶工が日本に先駆け、いち早く海外で高く評価されたのは納得ですね。
◆山下裕二(やました・ゆうじ):1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻・小学館刊)の監修を務める。笑いを交えた親しみやすい語り口と鋭い視点で日本美術を応援する。
◆田中道子(たなか・みちこ):1989年生まれ。女優。2013年「ミス・ワールド」日本代表に選出、モデルとして活躍。放送中のドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)で女優デビュー。
撮影■太田真三 取材・文■渡部美也
※週刊ポスト2016年11月25日号