この授業は今のところ、BBT大学のオンライン学習用ソフトウエア「エア・キャンパス」で行なっているが、これをさらに進化させるとすれば、AI(人工知能)を活用し、さらにVR(仮想現実)やAR(拡張現実)の技術なども全部組み合わせて、学生たちがどんどん自分で構想を膨らませるようにする、という方法が考えられる。
いわばスマホゲームの『ポケモンGO』のようなアプリなどを応用して児童・生徒・学生が自ら学ぶ「AL(アクティブ・ラーニング=能動的学習)」の実践である。
ALという考え方自体はすでに文科省の審議会などでも提唱されているが、単に子供たちが受け身ではなく主体的に学ぶ学習法という意味で使われることが多い。しかし、構想力というのはまだ誰も考えたことのないものを生み出す力だから、あらかじめ答えが書かれている学習指導要領とは本来、相容れないものだ。
そもそも子供たちの構想力を引き出すためには、教師側にそれを促す力量が必要になるが、それが今の日本の教師たちにあるかどうか、甚だ疑問である。
むしろALは、AIなどを組み込んだ創作ゲームの形でやったほうが効果があるのではないかと思う。わかりやすい例で言えば、多くのRPG(ロールプレイングゲーム)では、自分で選択して次のドアを開けると、全く別の運命が待っている。これは人生そのものであり、そこでのカギは英語で言うところの「What if……?」(もし……だったらどうするか?)である。
たとえば、もしコロンブスがイタリアのコルシカ島で生まれて海洋都市ジェノバで育ったのではなく文化の中心地ローマで生まれ育っていたら……と考えることによって頭は柔軟になり、先人が考えたことのなかった新しい空間に行くことができる。
つまり「What if?」と考える練習を何回も何回も繰り返すことによって無から有を生む構想力が身につくのだ。ここでさらにAIを活用すれば、能力レベルごとの細やかな学習も容易になるだろう。
※週刊ポスト2016年11月25日号