他にも広告業界に知られる珍伝説は色々ある。ソフトバンクの人気CM「白戸家の人々」は、犬が父親で息子が黒人男性のダンテ・カーヴァー、娘が上戸彩という設定だ。すると、「黒人は犬から生まれたと言いたいのか?」というクレームが日本人から来たという。また、とある一般消費財のCMで、髭面のラグビー選手二人が肩を組む演出を中心に考えたところ、「LGBT(*)団体からクレームが来るかもしれない」とお蔵入りになった。

【*ゲイやレズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーなど、性的少数者の総称。】

 こうした人種やジェンダーに関するものは主にリベラル派からのクレームだが、保守派からも「女子が『ら抜き言葉』や『やばい』を使うと『言葉の乱れを助長するのか』というクレームが来る」(コピーライター)と、もはや全方位的クレーム殺到状況なのだ。

 とはいってもクレーマーはいつの時代にもいる。私が新入社員時代に先輩から聞いた珍伝説として、1990年代にハウス「ハッシュドビーフ」のCMで流れた「あらこんなところ(家庭の冷蔵庫)に牛肉が」という歌に、「冷蔵庫に放置された牛肉を使うのは不衛生」との意見が寄せられた。その後、CMの舞台はスーパーの精肉売り場に変わり、歌詞は「あらお久しぶりね牛肉さん」になったというが、これにはクレーマーを皮肉るかのようなメーカー側の妙な意地を感じたものである。

◆文/中川淳一郎(ネット編集者)

【PROFILE】1973年生まれ。東京都出身。一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。2001年に退社後、ネット編集者、ライター、PRプランナーとして活動。近著『バカざんまい』(新潮新書)など著書多数。

※SAPIO2016年12月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン