事態が急転したのは、11月中旬のこと。国が来年2月、オプジーボを緊急的に値下げすると突然発表したのだ。しかも値下げ幅は「50%」という抜本的な見直しだった。この発表には全国紙の医療担当記者も驚いたと打ち明ける。
「通常、薬価は2年に1度の診療報酬改定で見直されるもので、次の改定時期は2018年4月だった。それが1年2か月も前倒しされたうえに、50%もの大幅値下げは極めて異例です。患者にとってはいい話かもしれないが、これまでの値段は何だったのかと思わざるを得ません」
画期的な治療薬なだけに大きな注目を集めた今回の大幅値下げ。そもそも、薬の値段はどうやって決まっているのだろうか。医療ジャーナリストの油井香代子氏が解説する。
「オプジーボのような他に似た薬のない画期的な新薬の場合、メーカーが『開発にこれだけかかった』という資料を提出し、それを元に厚生労働省などが患者数や売り上げを推定し、総合的に薬価が決まります」
これが「原価計算方式」と呼ばれる算出法だ(ちなみに、似ているタイプの薬がすでにある場合は、その値段を参考にして薬価を決定する「類似薬効比較方式」が採用される)。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏はこう話す。
「『原価計算方式』では製造原価、販売管理費、研究開発費などを足し合わせながら薬価を算定していきます。メーカーが独自に価格を決定できないという建前ですが、必ずしもそうなっていない側面がある。
審査のベースとなるのは製薬会社側が提出した資料です。どこまでを“その薬の開発にかかったコスト”と認めさせるか。要はプレゼン能力の勝負になってくるわけです。実際、大型設備投資や人件費などは“どこまでがその薬の開発にかかったコストか”を厳密に割り出すことなどできない。そうした意味では薬の原価にはグレーゾーンが大きい」
そうした土壌があるなかで、“超高額薬価”となったのがオプジーボだった。
※週刊ポスト2016年12月9日号