現在、「夢の新薬」として世界中から注目されている薬がオプジーボだ。患者の免疫機能に働きかけてがん細胞の攻撃力を弱めるこの薬は、これまでの常識を覆すアイデアを用いたものだ。
2014年7月に承認され、悪性の皮膚がんでは、余命半年と思われた患者の体からがん細胞を消し去るなど、大きな効果を上げている。
また、森喜朗・元首相が肺がんの除去手術後、再発したがんをオプジーボで“退治”したことで体調が劇的に回復した例も知られている。
抗がん剤と比べて副作用も少なく、今後は多くのがんへの保険適用が期待されるオプジーボだが、ネックとなっていたのが「超高額」な薬価だ。
オプジーボの薬価は1瓶(100mg)約73万円。体重60kgの患者が2週間おきに2瓶ずつの標準的な点滴治療を1年続けると、年間の費用はおよそ3500万円に達する。
あまりに高額な薬価は各方面に波紋を呼んだ。
今年9月には全国保険医団体連合会がオプジーボの価格について、米国で約30万円、英国で約15万円との試算を公開し、「日本だけが途方もない薬価を算定した」と厚労省を批判した。
それ以前にも医療関係者からは「1つの薬剤をきっかけに、国が滅びかねない」と危惧する声が上がっていた。年間3500万円の薬剤費といっても、患者の自己負担額の上限は100万円程度で済む(年収770万円未満の場合)。残りは国の保険財政から捻出されるのだ。