火曜22時枠の放送がそれほど長くなく、視聴率の影響を受けにくいNHKはさておき、「自らのドラマ枠移動が『逃げ恥』の大ヒットをアシストすることになった」フジテレビは悔しいでしょう。TBSとは日曜21時もドラマ枠が重複して苦戦が続いているだけに、来年はこれまで以上に「打倒TBS!」の意気込みで臨むことが予想されます。
TBSの22時枠は、「今年4月と10月にライバルが次々に撤退する」という幸運な面こそあるものの、「女性視聴者をターゲットに絞り、女優を前面に押し出したドラマを作る」というコンセプトを貫き通したのは、紛れもない事実。特に今年は、『ダメな私に恋してください』『重版出来!』『せいせいするほど、愛してる』『逃げ恥』と、4作すべて“女性が主人公のマンガ原作ドラマ”という徹底ぶりでした。ネットのクチコミを増やす演出にも精力的で、年間を通して「話題を提供しよう」と努力し続けた姿勢が、『逃げ恥』の大ヒットにつながった感もあります。
来年1月スタートの冬ドラマも、主人公はもちろん女性。松たか子さんと満島ひかりさんの演技派女優2人が共演する『カルテット』の放送が予定されています。『逃げ恥』ほどの大ヒットになるかは分かりませんが、セリフ劇の名手・坂元裕二さんの脚本ということもあり、女性の支持をつかむ作品になるでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。