■人は、ベクトルの向きが同じ仲間との「確認の交換」で世界が広がる
倉本氏「なんもないやつら、貧乏人の学のない4人が集まって、『できる!』って勝手に本気で思う。『どう?』『ほら、できる!』、『これはないよな』『ないない!』っていうのをお互いに何回も確認していく。2人いたら、確認ができる。一人だとできない。そういう交換によって、“広がって”いく。同じ言語でしゃべっていても、人によって伝わりかたが違う、合う・合わないがある。それはそれでいい。互いのジョンでありポールを見つけたらいい。
『閃き』って漢字をよく見ると、自分の脳の門がしまっていて、その鍵穴に合う人が来るっていうかたちをしているわけよ。合ったらガチャンと開けてくれる。なんか話がはずむ人っているでしょ? そういうときは閃きのカギの開け合いをしてんねん。人と語り合う。閃きは一人でひらめかんでいいねん。日常で“閃きコーチ”みたいな間柄の人をみつけること」
鈴木氏「ジョンとポールが曲を作っている写真がある。2人で一緒に曲を作るって案外なくて、それが変でインパクトのあるコード進行を作ったんじゃないかって思っています」
倉本氏「いままでにない角度を増やしていくためには、だれかと思想を戦わせながら。(そうしていると)ぼーんと。ただ、ジョンとポールだけじゃああはならない。ジョージ・ハリスンは、圧倒的な才能を持つ2人の横で、自分としては客観的にみるというポジションになる。そしてもうひとり必要だったのが、デビューする直前にやって来たリンゴ・スター。当時ビートルズより売れていたバンドでドラムを叩いていたけど、バンド内のコミュニケーションにちょっと問題があってやってきた。
タイプが全然違うのに、世界一という目標は一緒。見事にベクトルが合った。それでもブレイクはしない。もう2つ必要な要素があった。ビートルズって4人組と思われているけど、あそこまでになったのはブライアン・エプスタインというマネージャーとジョージ・マーティンというプロデューサーがいたから」
鈴木氏「ベビーブーマーの時代とか、機材とかのイノベーションもあった。タイミングも良かったのかもしれない」
■日常は発見だらけ
倉本氏「日常は発見だらけですからね。『明日』っていう言葉あるじゃないですか。漢字をよく見つめてください。明るい日なんですけど、(漢字を分解すると)日、月ときて、もっかい日が来るでしょ? ほんとに一日たってるんです、明日っていう文字は。太陽が出て月が出て太陽が出て、それだけで明るい日なんです。っていうことは未来は明るいんです。それを見つけたとき、めっちゃびっくりして。30代半ばかな。めっちゃ明るいやんけ!っていう。これってどうしてこうなんだろうな? っていうことに気づいたときに、自分のなかに革命が起こったり、脳が更新されたりしていく。
知識っていま、調べやすい時代になっているけど、(逆に)調べても出てこないこと、定義されていないことが山ほどあるんですよ。誰も言ってないことを思いついていったほうがよくて、それは誰にでもチャンスがあるということ。それをどれだけ増やしていってどれだけ人に伝えていくかっていうこと」
鈴木氏「自分がジョン・レノンになったつもりで書く企画書って、いいものができる気がする。人々の力になれるように演出できるという文脈に、商品とかを置くと迫力のあるものができる。“おかんに紹介できる仕事”っていうエッセンスから発想したときはいいものができる」
倉本氏「どういう考え方で考えるかをまず決めるっていうのは、(手法として)ありますよね。そのお手本がビートルズ。結局彼らは人と違うことをやろうというスタートで、人に自由を増やしたし、最終的には平和のことだけ考えていった。
「出会いが大事、出会った人とコミュニケーションをとりながら面白いものが生まれていく」という倉本氏。いちばん嬉しい瞬間は「自分の表現したものが伝わったとき」で、「テレビ番組も、みんなをフンフンって言わせるために、時間はかかるけど、最初に思いついたことをできるだけ純度高く作りたい。それを見て、みんながウンって言ってくれたときにいちばん喜びを感じます」と語った。