芸能

伝説的バンド・ビートルズ 現代の生きるヒントになる発想法

当日は倉本氏の歌も披露された

今年は数々の伝説を残したザ・ビートルズ来日50周年。1966年におこなわれた日本武道館公演は6月30日~7月2日、3日間5回の公演で5万人を動員、テレビ中継の視聴率は56.5%を記録(ビデオリサーチ・関東地区調べ)。今でこそ武道館はミュージシャンの“聖地”だが、当時はロックミュージシャンが武道館を使用するのは前例がなく、「武道」館なのに……と物議をかもしたという。

武道館でコンサートをやろうと思いたち、多くの人を熱狂させたビートルズ。1963年にデビュー、1970年には解散というたった8年の活動ながら、今でも愛される名曲を多く世の中に送り出している彼らの発想法には、学ぶところも多いのではないか――。そんなビートルズの発想法について、11月27日、武道館が正面に見えるTKPガーデンシティ竹橋10Fにて、放送作家の倉本美津留氏をゲストに迎えたトークイベント「ビートルズ発想法」が開催された。

これは博報堂生活者アカデミーが開催する「発想偉人に学ぶ。」をテーマにしたイベントのうちの一つ。「発想偉人」は同アカデミーの造語で、過去、世の中に大きな影響を与える発想をして人々の生活の価値観を大きくチェンジし、現代においてもその発想が生き残っている人、と位置づける。

『ビートル頭』という著書もある倉本氏は「テレビのなかで新しい切り口のものを増やそうと思って悪戦苦闘している。そんなときにビートルズの発想が役に立つ」と話す。トーク相手は博報堂社員でミュージシャン、ビートルズマニアを自認するスージー鈴木氏だ。当日は“ビートルズ世代”はほど遠そうな若者が多めで、席を増設するほどの大盛況。倉本氏の話に、聞き入った。

■倉本氏「僕らは、ビートルズを伝えていかなくてはいけない世代」

倉本氏「世の中を本当に変えたんですよね、ビートルズは。その事実さえ知らずに若い人たちは生きているし、同時代の人は実感しながら生きているから、ビックリもしない。ちょうど僕らくらいの世代が、あのときとんでもないことが起こっていたんだなって気がついてる。だから、それを伝えていかなあかんと思うんです。

(解散した1970年に)コンサートをもうやらないと決めて、最後に1回だけやろうってなったとき、タダで街中のビルの屋上で、新曲を発表した。ビートルズは『人のやらないことを一番最初にやる』って決めていて、そういう感覚を持った人が集まっている。

例えばビートルズ前っていうのは特権階級が音楽業界を仕切っていた。ビートルズはデビュー曲をプレゼントしてやるっていわれたけれど、自分たちが作ったものじゃなきゃやだって言った。当時はそんなこと常識的に考えられなかった。体制からいわれたことに対してたたかうんです。常に、自分たちを信じて。コンサートでも、設置されていた黒人のための枠を撤廃させたりした」

鈴木氏「平和とか人種差別とかの前に、頭を“フラット”にする」

倉本氏「いいものを誰が作ったのかということ。黒人差別がまだ根強かった時代に、なんにも関係ない。嫌なことは嫌、やりたいことはやりたいと発言する」

■ジョンとポールに通じるダウンタウンの2人 共通点は「行動力と閃き力」

倉本氏「重要なのは、自己中心的なジョン・レノンという男がいること。大人のやっていることにいつも疑問をもちながら、自分の感性を信じて生きている。でもいくら一人で言ったところで、聞いてもらえなければ意味がない。そこで大事なのがポール・マッカトニーという男。これが正反対というか、人との調和を考えて、どうやったら人気者になれるかを考えられる人。ポールはジョンの考え方わかる、目標は一緒なんやけど、性格が違う。この、目標が一緒で違うタイプの人間の出会いというのが大きいですよね。

誰と組むのかがカギ。ダウンタウンに出会ったときに、ビートルズとめっちゃ似てると思った。ジョンが松本、浜田がポール。行動力と閃き力の連続なんですよね」

■「超えたい」という意識が大切

鈴木氏「変な歌、変なコード進行。どうやって思いついたんやろうって。こんな発想をするという凄さ。そして、今は変じゃなくなっている」

倉本氏「ちょっと時間をおいたら、美味しくなってる。最初苦ッ!って思うのに。『抱きしめたい』を最初に聴いた日本人は『おそろしい』『こわい』という感想だったそうです。どう受け止めていいのかわからない、特に理屈で考える男性は。女性は関係なしに『きゃー!』とかいえるけど(笑)。当たり前になる前には当たり前じゃなかったことを誰かがやり始めて、それによって(現代の)選択肢が増えている。

閃きと行動力と、あとやっぱりアンテナというか。偶然に身を任せるって大事なのね。ポールが友だちに誘われて、ライブに行ったからジョンに会った。そしてジョンの楽屋にいって、オレもギター弾けるでってやってみせたら、ポールのほうがうまかった。そこからアイツやばい、入れなあかんってなった。でもそれも、そもそも最初の友だちがいなかったら起こらなかった。

のちに、その少年が『イマジン』という曲を出して、戦争中には流さないように規制されるくらいの影響力をもつようになった。ジョン・レノンがいなかったらかなり今は変わっている。

でも、これ、日常の話だから。誰でも世界平和に貢献できるということでもある。(ビートルズは)誰も最初はそんな(影響力をもつという)ことは思ってない。かっこいいことをやりたかっただけ。アメリカにエルビス・プレスリーというバケモンがいる。かっこいいなと憧れる。だけど、次に思ったのが、『プレスリーみたいになりたい』じゃない。連中は『あれを超えたい』と思った。超えなあかんなと思った。それが大事」

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン