ビジネス

日産ゴーンCEOの三菱自動車会長就任 根本的に問題あり

大前研一氏が企業ガバナンスの問題点を指摘

 カルロス・ゴーン日産自動車CEOが、三菱自動車の会長に就任する。各報道は、ゴーン氏のやり手ぶりに驚くといった程度のトーンばかりだが、経営コンサルタントの大前研一氏はゴーン氏の就任は、企業のガバナンスとコンプライアンスにかかわる根本的な問題だと指摘する。なぜ問題があるのか、大前氏が解説する。

 * * *
 三菱自動車工業を傘下に収めた日産自動車のカルロス・ゴーンCEO(会長兼社長)が、三菱自動車の会長に就任することになった。今月開かれる三菱自動車の臨時株主総会で正式決定するという。

 これに関するマスコミの報道では「3足のわらじ」とか「ゴーン氏が金曜会(※)に出席したらどうなるか」といったお気楽な記事も見受けられた。

【※三菱グループ29社の会長・社長を会員とする最高決定機関】

 しかし本件は、そういう次元の問題ではない。「そもそも1人の人間が複数の上場企業のトップを兼務してよいのか?」という企業のガバナンスとコンプライアンスにかかわる根本的な問題であり、なぜゴーン氏の日産・三菱トップ兼務を日本取引所グループが許容するのか、私は全く理解できない。

 というのは、日本取引所グループは従来、1人の人間が複数の上場企業のトップを務めることを認めていないからだ。実際、企業が新規上場する時にはCEOだけでなく取締役の一人一人に関する兼務などの照査が行なわれ、「利益相反」がある企業との兼業は禁じられている。

 今回のゴーン氏の場合は日産も三菱も上場企業である上に同業種だ。しかも日産は三菱の株の34%を保有して株主総会における決議事項への拒否権を持っている。この2社のトップを兼務することは、新規上場申請時だったら絶対に認められない。利益相反を生む可能性があるからだ。

 とくに今回のケースでは日産が三菱に軽自動車の生産を委託しているので、その仕切り価格を意図的に操作すれば両社の利益を自由に上げ下げできてしまう。あるいは、最先端技術を日産と三菱が共同開発して生産は日産だけに行なわせる、ということも考えられる。これは日産と三菱のトップを兼務するゴーン氏が指示すれば可能なことだが、いずれも利益相反である。

関連記事

トピックス

谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン