同年8月2日、中国共産党の非公式重要会議「北戴河会議」を一週間後に控えたこの日、習近平総書記率いる党中央は、唐突に「共青団中央改革法案」を発表した。
過去4年間の習近平総書記は、最大の政敵である江沢民派との権力闘争に明け暮れた。周永康、薄熙来、徐才厚、郭伯雄……。江沢民派の大物幹部たちを、次々と獄中に叩き込んできた。90歳を迎えた江沢民元総書記は、すでに上海で入院中で、江沢民派はいまや、「兵どもが夢の跡」だった。
そこで習近平総書記は、もう一つの巨大派閥である「団派」(胡錦濤派)に宣戦布告したのだった。「団派」とは、共産党のエリート養成機関である共産主義青年団(共青団)出身者を指し、中国全土に約8000万人もいる。
習近平総書記が「団派」に叩きつけた改革案は、共青団中央の機構、幹部の選抜方法、活動内容、共産党・政府との関係の4点を是正していくというものだ。要は、今後は共青団を「習近平傘下」に置くので、従う者は選抜するが、従わない者は排除するという「通告」だ。
この改革案に「団派」は沈黙した。そこで勢いを得た「新貴」たちは、北戴河会議で次々に発言した。
「優れた指導者(習近平総書記)ならば、プーチン大統領のように半永久的に執権すべきだ」
「優れた指導者がいるのに、いまから若手の後継者を育てる必要などない」
「優れた指導者さえいれば、常務委員(トップ7)は5人いれば十分だ」
2017年は、秋に第19回共産党大会が開かれ、習近平総書記にとって「独裁体制完遂の年」となる。そして習総書記が抱く「中国の夢」がかなった暁には、中国は「大きな北朝鮮」と化すことになる。
●文/右田早希(ジャーナリスト)
※SAPIO2017年1月号