「女敵討ち」は不名誉な仇討ちだった


【1】「仇討ち許可証」入手で合法的な復讐が可能に

 公的に認められた殺人であることを証明するため、また他藩へスムーズに移動するため、仇討ちには許可証が必要となる。評議は「勘定奉行」「寺社奉行」「町奉行」の三奉行が行い、認められれば公儀御帳に「帳付け」が行われる。仇討ち後は捕縛されるが、「帳付け」で仇討ち事案と確認後、無罪放免に。

【2】「助太刀」が女子供の代わりに仇を討つ

 討ち手が女性や子供で、仇を討つことが難しい場合には、他者の力を借りることが認められていた。助太刀も、藩や奉行所へ許可を求める際に申請が必要だった。

【3】「女敵討ち」は不名誉な仇討ちだった

 妻が寝取られた際に姦通相手と妻を討つこと。姦通が発覚した際の女敵討ちは武士にとっての義務だったが、不名誉なことであったために公にしないこともあった。

【4】「後妻討ち」で女の無念を晴らす

 夫が妻を離縁して1か月以内に後妻を迎えたとき、前妻が予告した上で後妻の家を複数の仲間と共に襲い家財を破壊するもの。前妻の顔を立てるために行われていた儀礼的な風習。

【5】「さし腹」を迫られれば断れない

 敵を指名して腹を切り、相手に腹切を迫る復讐法。指名された側が切腹を拒むのは「武士の恥」とされた。

◆文/竹内誠(江戸東京博物館名誉館長・歴史学者)
 
◆取材・構成/HEW(大木信景、浅野修三)

【PROFILE】たけうちまこと/1933年東京都生まれ。東京教育大学大学院博士課程修了文学博士。信州大学助教授、東京学芸大学教授、立正大学教授を経て、現在、徳川林政史研究所所長、江戸東京博物館名誉館長などを務める。主著に『江戸社会史の研究』(弘文堂刊)、『元禄人間模様』(角川書店刊)、『春夏秋冬 江戸っ子の知恵』(小学館刊)など。

※SAPIO2017年1月号

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン