国際情報

アメリカがNATO離脱したら重要性を増すのはトルコ

米国内では激しい抗議デモも Reuters/AFLO

 トランプ政権でアメリカの外交政策が大きく方針転換する可能性がある。これまでアメリカは多額の軍事費を使い、「世界の警察官」としてふるまってきた。しかし、オバマ大統領はすでに世界の警察官をやめると宣言した。トランプ外交はそれを加速すると思われる。大前研一氏は世界はいっそう混迷を深めると指摘する。

 * * *
 トランプ氏はNATO(北大西洋条約機構)について「時代遅れな存在」「加盟国はアメリカの気前の良さに感謝していない」と批判してきた。もし、アメリカがNATOを離脱したら、EUはロシアの脅威で背中が寒くなる。ウクライナ問題が起きた時、EUがロシアに対して経済封鎖を行うことができたのも、バックにアメリカがいたからだ。
 
 NATOからアメリカがいなくなると、EUはロシアに対するオプションが非常に限られてくるので、前述の中国に対する日本のようにロシアとの間で“疑似”安保条約のようなものを結ぶ必要があるかもしれない。フランスはナポレオンで、ドイツはヒトラーでロシアに敗北している。アメリカの積極的な軍事支援がなくなればこのトラウマが蘇り、ロシアとは友好関係を結ばずにはいられない心境になるだろう。

 その場合に重要になってくるのはトルコだ。トルコはNATOに加盟しているが、エルドアン大統領は、アメリカやEUの一部からクルド人の人権を侵害している、独裁化していると批判されているため、非常に反発している。この問題がこじれたら、トルコが欧米との絆を切ってロシアと手を組む可能性もあると思う。

 トルコとロシアの関係は、昨年11月のトルコ軍によるロシア軍機撃墜事件で一時冷え込んだが、エルドアン大統領が撃墜機の遺族に謝罪して修復した。もし軍事大国のトルコがロシアと組み、さらにアメリカもNATOを離脱するとなれば、ヨーロッパの安全保障は大きく揺らぐことになる。

※SAPIO2017年1月号

関連記事

トピックス

2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
若隆景
序盤2敗の若隆景「大関獲り」のハードルはどこまで下がる? 協会に影響力残す琴風氏が「私は31勝で上がった」とコメントする理由 ロンドン公演を控え“唯一の希望”に
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン